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“人間中心”の地域DXが目指すべきもの【第2回】
各地域でスマートシティ/スーパーシティの推進が本格化し始めている。日本全体を対象にしたアーキテクチャーの中でのポジションをそれぞれが確認し、ビジョンを共有しながら全体を完成させていくことが重要になるだろう。前回はデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させるためのポイントなどを紹介した。今回は、そのなかで最も重要な軸である「人間中心のDXとは何か」と、それを実現するための方法論を考えてみたい。
「デジタル庁」の新設に関する法案審議が始まった。デジタル庁は当面、行政全般のデジタル化を取りまとめていくことが主な役割になると思われる。だが是非、社会全体のデジタライゼーションの手本を示していただきたいと思う。
行政サービスは社会の一部に過ぎない。医療、教育、観光、エネルギー、モビリティ、そして地域の農業や漁業、ものづくり産業や商業など、市民生活にかかわるすべてが連携するプラットフォームが確立されることが、今後の地域社会の事業継続計画を実現し、最終的に国民1人ひとりの幸福や健康を達成させられる。
人間を中心とした地域DXを実現する
台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タンさんは「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは人と人を繋ぐことだ」と言う。平井 卓也デジタル改革担当大臣も「『人間中心のDX』『誰一人取り残さないデジタル社会』を実現する」と明言している。多くの企業代表者もDXを取り上げる際には「人間中心」というメッセージを発することが多くなってきた印象だ。
その背景の1つには、デジタルの象徴としてAI(人工知能)やロボットなどが強調して取り上げられてきたことからデジタル化に対し「AIが人間の能力を超え多くの職を奪うのではないか」「人間がロボットに置き換わるのではないか」といった漠然とした不安がある。“人間中心”は、そうした不安に寄り添うためのメッセージだともいえる。
以下では、より具体的に「人間中心のDX」を実現するための方向性と方法論について掘り下げていこう。
そもそも「人間中心のDX」とは何だろう。筆者の考えは、「これまで以上に、個人それぞれの意思に基づいた自由な生き方を実現するための社会構造の再構成をデジタル化で実現すること」である。
図1に、現状のIT化から、「ステージZERO」としてのDX、そして「あるべきDX社会」の3つのステージを示した。