• Column
  • Open My Eyes to Smart City 人、街、地域、そして社会をつなぐ

都市のデジタルツインを実現するアーキテクチャーの“あるべき姿”【第3回】

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括)
2021年4月22日

観点3:国内共通プラットフォームを実現する

 国内の共通プラットフォームとしては、各省ベースレジストリーと民間が運営するプラットフォームとを考える必要がある。

各省ベースレジストリー

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策において、地域ごとの緊急事態宣言発令を判断する責任者は国なのか知事なのかという議論が起こってきた。日本のガバナンス体制の曖昧さが露呈した格好だが、このままだと日本全体のDXも現場に任せるべきか国が整備するべきかは曖昧なままになってしまうだろう。

 自治体と国の役割をどのようにすみ分けていくかを判断する際に最も重要になるのは、全国共通レイヤーとなる各省庁のベースレジストリー(社会基盤となる重要な情報)のプラットフォームのポジションと範囲である。上述したように国民が直接的に接点を持つのは基礎自治体であり、DX環境でのタッチポイントは地域ポータルである。

 だが現在、マイナンバーカードの普及を推進するための国民とのタッチポイントである「マイナポータル」は、国主導で構築されており、現実社会との整合が図られていない。

 国民とのタッチポイントになるポータル機能を国の共通システムに設けてしまうと、国民は日常サービスでは地域ポータルを利用し、共通手続きを行うときは国のポータルにアクセスしなくてはならない。一市民が何らかの手続きで各省庁を訪ねることはほぼないのに、デジタル上ではそうなってしまう。つまりデジタルツインになっておらず、本来あるべきアーキテクチャーではないのだ。

 本来は、一貫したガバナンス体制で国全体の業務改革を実施し、アーキテクチャーのデジタルツイン化を検証するべきである。

 国が進めるべき共通システムはベースレジストリーに位置付け、各自治体が進めるべき取り組みは各地域の都市OSからAPI経由でアクセスできるようにすることがアーキテクチャー上はシンプルで美しい。図1に示したように、地域情報を連携することがベースレジストリーの役割だと位置づけることが望ましい。

民間プラットフォーム

 官民データ連携の重要性が問われている一方で、民間企業が保有するデータの活用も十分には進んでいない。個人情報保護法がデータの目的外使用を禁じているため、個別の目的で集められたデータは、それ以外には使えないためだ。

 例えば、ポイントを貯める目的で作成・使用しているポイントカードに紐づいた購買履歴データは現状、個人情報を含まない形でマーケティングデータとして活用されることはあっても、データを提供した個々人にパーソナライズしたサービスを提供することには使えない。データの提供者がメリットを受けられないのである。

 各企業が保有する既存データ(あえて「休眠データ」と呼ぶ)は、どうすれば市民にとって意義のある使い方ができるだろうか。筆者は、オプトインを得ている企業側から既存データを活用した新たなサービスを提供することを説明し、改めてオプトインを得たうえでデータ連携を図り利用できるようにすれば良いのではないかと考える。

 消費者向けビジネスに関連している多くの日本企業は、マーケティングデータを集めるために多くのポイントサービスを連携させてきた。このデータをパーソナライズデータとして蘇らせることができれば、デジタル化のためのビッグデータの整備に要する時間は大幅に短縮できるだろう。

 アクセンチュアとしては、実証フィールドである会津若松市において市民へのダブルオプトインを検証し、その結果を読者のみなさまに報告したいと考えている。

あるべきアーキテクチャーを描く絶好のチャンスを逃すな

 地域には行政を中心に、人が営むために必要な産業や教育機関、医療などがある。すべてがオープンに、かつ対等に連携することで、それぞれのシェアが可能になり、本来の目的である“ウェルビーイング(Well-being:幸福)”を追求できる。それこそが、「スマートシティプロジェクトは、筆者がこれまで携わってきた仕事の集大成である」と決めて取り組んできた理由だ。

 スマートシティを完成させるためには、あるべき全体のアーキテクチャーを議論して妥協せずに実現する必要がある。地域の集まりが国である以上、国全体のアーキテクチャーをデザインし、すべての関係者が、その設計を共有してルールを守ることで日本のDXモデルを世界に示せるだろう。

 そのアーキテクチャーがデジタルツインを生み出したとき、人々はデジタル化を素直に受け入れるのではないだろうか。

 今、あるべきアーキテクチャーを描き追求する絶好のチャンスが訪れている。「デジタル庁」が立ち上がる、この機会を逃し、従来のように曖昧なまま妥協してしまっては、デジタル化の遅れを日本は取り戻せないだろう。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同代表。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、オープン系ERPや、ECソリューション、開発生産性向上のためのフレームワーク策定および各事業の経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、高度IT人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興による雇用創出に向けて設立した福島イノベーションセンター(現アクセンチュア・イノベーションセンター福島)のセンター長に就任した。

現在は、震災復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中からの機能分散配置を提唱し、会津若松市をデジタルトランスフォーメンション実証の場に位置づけ先端企業集積を実現。会津で実証したモデルを「地域主導型スマートシティプラットフォーム(都市OS)」として他地域へ展開し、各地の地方創生プロジェクトに取り組んでいる。