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スマートシティからスーパーシティへのステージアップ【第4回】

中村 彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括)
2021年5月20日

データ基盤が様々な打ち手を可能にする

 「Stage Zero」でデータ基盤を構築・整備できれば、多くの手が打てるようになる。図2の「健康増進・リスク検知・相談」を例に、具体的に説明しよう。

 AIホームドクターが管理する日々のデータが異常を示した場合、会津若松+から本人に通知が届く。その際、そのデータから推測される疾病の専門医が、会津若松市医師会名簿から「ドクターインデックス」として提示される。そのリストから本人が、主治医やセカンドオピニオンを求める別の医師を選択する。

 この本人による選択行為がオプトインとなって、ヘルスケアデータが、本人と、選択した主治医、もう1人別の医師(セカンドオピニオン)の三者で共有され、必要なときにオンラインや対面での診療予約ができる。

 これが実現できれば、データは異常を示していても本人に自覚症状がなく少しずつ進行していた疾病を、数カ月早く発見できるようになるだろう。早期治療が可能になれば、重篤患者を減らせるなど、その成果を多くの市民が享受できる。まち全体が健康長寿のまちになり、病気に苦しむことなく元気に長生きできる社会につながっていくだろう。

 さらには、集めたデータを、本人の承諾を得たうえで、個人が識別されない加工情報として創薬などに再利用できれば、医療の発展にも寄与することになるはずだ。

 バーチャルホスピタル会津若松プロジェクトの実施においては、医療関連の多くの規制緩和が必要で、包括した緩和策が求められる。AIによる補助診断や医療相談は現状、自由診療として扱われており、例えば糖尿病などの基礎疾患を持っている患者へ適用しようとすれば保険適用外になる。AIホームドクターがドクターインデックスとして医師の情報を推薦する行為にも、医療広告規制の改正が必要だ。

 これらが、スーパーシティ特区により規制緩和されれば、バーチャルホスピタル会津若松が実現する効果は、地域医療のあり方や、医師と患者の関係、市民の予防医療に対する意識改革を実現し、医療のDXモデルを示すことになるだろう。

 このようにスーパーシティは、地域課題を解決するために先端テクノロジーをフル活用して新たな時代を作るための国家戦略特区であることを再認識しなければならない。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同代表。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、オープン系ERPや、ECソリューション、開発生産性向上のためのフレームワーク策定および各事業の経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、高度IT人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興による雇用創出に向けて設立した福島イノベーションセンター(現アクセンチュア・イノベーションセンター福島)のセンター長に就任した。

現在は、震災復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中からの機能分散配置を提唱し、会津若松市をデジタルトランスフォーメンション実証の場に位置づけ先端企業集積を実現。会津で実証したモデルを「地域主導型スマートシティプラットフォーム(都市OS)」として他地域へ展開し、各地の地方創生プロジェクトに取り組んでいる。