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スマートシティからスーパーシティへのステージアップ【第4回】
2020年、地域のデジタル化を推進するための「スーパーシティ法案」が成立した。行政・社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)についてスマートシティを軸に解説する本連載では前回、地域の集合体でもある国全体が持つべきアーキテクチャーについて語った。今回は、福島県会津若松市のスマートシティを約10年推進してきた経験から、進むべきスーパーシティの方向性に関してまとめてみる。スーパーシティは日本をどのように変えるだろうか。
図1は、会津若松市が、この10年、スマートシティに取り組んできた軌跡と、今後のスーパーシティを目指してステージアップさせるべき領域を示したものである(関連連載『会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか』)。
データ基盤を整備し既存企業のDXで経済基盤を再生へ
会津若松市のこれまでの10年は、第1ステージとして、行政が持つオープンデータの活用を容易にし、地域DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するための基盤づくりに多くの時間を割いてきた。一般市民向けインタラクティブポータル「会津若松+(プラス)」やWebサイト「DATA for CITIZEN」などの整備である。
DATA for CITIZENでは、オープンAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を活用し、会津若松市に関するアプリケーションやデータを市民に無償で公開・提供している。人材育成も兼ねたデータハッカソンを開催し、オープンデータ活用モデルの啓蒙と検証も継続的に取り組んできた。
それにより「会津若松+」を使ったコラボレーションを開始し、市民が持つデータの活用について、市民から事前に承諾を得る「オプトインモデル」の基盤を整えるとともに、その重要性を確認してきた。
並行してスマートシティ会津若松の活動を全国に広くオープンに伝えることで地域を訪れる「交流人口」が増大。さらにスマートシティ会津若松に参加を表明する企業が増えたことで「関係人口」も増えた。
2019年4月には、第1ステージの集大成として、会津若松市内にICTオフィスビル「スマートシティAiCT(アイクト、以下AiCT)」が開設された。人口が減少し地域の新たな産業基盤が必要なことから、東京都内のデジタル企業の移転や集積が目的だ。2021年5月時点では、31社が入居し満室になっている。この活動は、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部の取り組み指針に当てはめれば「まちづくり」に当たる。
会津若松市の取り組みは現在、第2ステージにある。第1ステージのゴールが、首都圏などからデジタル企業を移転・集積させることだったのに対し、第2ステージで重視するのは、移転してきた各企業と、元々、地元地域に存在していた企業によるコラボレーションだ。
第2ステージの第1弾として2021年4月、地域の中小製造業に向けた共通プラットフォーム「コネクテッド マニファクチャリング エンタープライゼス」(CMEs)をスタートさせた。生産性の30%向上を目指す。
CMEsは、まち・ひと・しごと創生本部の指針の「しごと」に当たる。AiCTを中心に移転してきた各企業と、地元企業がコラボレーションすることで、既存企業のDX化による生産性向上や新たな経営モデルへの刷新を目指す。地域の将来を担う若手経営者とも連携している。