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- 新たな顧客接点を創出するコンタクトセンターの姿
在宅化が進むコンタクトセンターの成功要件【第2回】
事例3:HTBエナジー=在宅環境を1日で整備
HISグループの新電力会社であるHTBエナジーは、2020年4月の緊急事態宣言以降、社員の安全確保のために、すべてのオペレータの在宅移行を決定。ブラウザ上で通話ができる「WebRTC(Web Real-Time Communication)」技術を採用した。在宅業務用のノートPCを準備すれば、ソフトフォンやスマートフォンなどの通話用端末の準備が不要なため、在宅環境は1日で整ったという(図1)。
WebRTCでの通話品質は、各オペレーターの自宅のインターネット環境の影響を大きく受ける。ほとんどのオペレーター宅では通話品質に問題はなかったが、一部に音質低下や、対話中の途切れ、雑音により業務に支障が出るケースがあった。そのため、メールやチャット機能も導入し、通話品質の低下が懸念されるオペレーターはメールとチャットの担当にし、オペレーターの役割分担を図っている。
申し込みページを顧客と共有する「コブラウズ機能」も活用している。実際の申し込み時に画面を共有することで、どの項目に何を入力すべきかを具体的に説明できるようになった。
事例4:UTグループ=100%在宅化で人材を全国から採用し研修も工夫
UTグループは製造業を対象にした人材派遣会社。同社のコンタクトセンターは、求職者と面接官の面接をアレンジするという役割を持っている。現在は、2020年の緊急事態宣言時に取り入れた在宅体制を恒久化し、100%に近い状態で在宅運用している。緊急事態宣言解除後、製造業の生産が回復し人材派遣要請が増加したことで、コンタクトセンターでは一時的に業務が追いつかない事態が発生したためだ。
在宅運用に全面的に移行したことで、オペレーターの採用地域を全国に広げ人材を獲得している。そこでの大きな変化の1つが、新人教育やスキルアップ研修である。在宅でのオンライン研修のためにカリキュラムを見直したほか、1回の研修対象者数を2〜3人に絞り手厚くサポートできるようにした。従来の新人研修は、1組5人程度が中心だった。
研修後の現場でも新人はベテランに相談しにくい雰囲気はある。相談しやすい雰囲気を作るために、チャットルームを(1)着任間もない新人用、(2)着任後2〜3カ月のオペレーター用、(3)それ以上の経験のあるオペレーター用の3つに分けるなどの工夫をしている。
在宅移行に伴う課題をテクノロジーを活用して解決する
こうした在宅型コンタクトセンターを考える際の大きな課題の1つが、遠隔環境におけるマネジメントやスタッフ間のコミュニケーションだろう。テクノロジーを活用しながら、こうした課題をクリアして在宅化を推進したケースを見ていきたい。
例えば、東京個別指導学院の場合、まず技術面では、オペレーターが自宅で利用するPCの操作を監視するモニタリングツールや、VPN接続により業務とは無関係なサイトの閲覧やサービスへのアクセスを遮断するWebフィルタリングを導入している。
制度面では、社員教育・研修フローを見直し新たに制定したほか、自宅勤務時の遵守事項への誓約書なども作成した。並行して、オペレーターの在宅環境における生活雑音のチェックや、イレギュラー対応時のシナリオの制定などにも取り組んだ。
ブラザー販売の場合は、個人情報漏洩対策をより強固にするために、VPNによるログインに加え、顔認証によるセキュリティを導入し、画面の撮影や覗き見などを防止している。
これらの取り組みのほか、各種レポート基盤の整備も重要だ。在宅型を進める企業の担当者の多くが、「レポート基盤がしっかりしていれば、在宅環境でもセンター勤務の環境と遜色ないレベルでオペレーターの執務状況は把握できる」と異口同音に話す。
在宅化における、もう1つの心配事に、顧客対応に苦慮しているオペレーターへのスーパーバイザー(SV)によるヘルプがある。これも、コンタクトセンター基盤がチャット機能や内線機能を備えていればクリアできる。内線機能については、「今まで疎縁たった他拠点のオペレータとも迅速に連絡を取り合えるようになった」といった想定外のメリットも享受できる。