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「良いCXをもたらすためのAI」の提供価値(基盤用AIその1)【第4回】

中野 正人(ジェネシスクラウドサービス ソリューションコンサルティング本部・本部長)
2021年10月4日

新人もベテランに変えるAIによるエージェントアシスト

 良いCXをもたらすためのAIの、もう1つの仕組みがAI技術によるエージェントアシストだ(エージェントアシストの説明動画)。

 エージェントアシストは、オペレーターと顧客の会話内容を音声認識技術によってテキストに変換し、その文脈をAI技術で分析することで、最適なフレーズやキーポイントをオペレーターの操作画面に提案する仕組みである。

 これまでも音声をリアルタイムにテキスト化する仕組みは多数あった。だが、主にACW(After Call Work:平均後処理時間)にカウントされる報告書作成に利用されてきた。これに対しエージェントアシストは、音声認識したテキストデータを動的に二次利用することで、オペレーターが言い淀んだり、まごついたりすることなく顧客に応対できるよう支援する。

 エージェントアシストが提案するフレーズを適切に選択し読み上げれば、新人オペレーターであっても、顧客にはベテランオペレーターが応対しているように聞こえるはずだ。一見錯覚かもしれないが、有効なCXを提供できることにはなる。

 新人オペレーターの支援は、いずれのコンタクトセンターでも悩みのタネだろう。管理責任者であるスーパーバイザーが、あちこち飛び回って支援できる集合勤務型のセンターであれば、何とかなるかもしれない。だがwithコロナ/postコロナの時代にあっては、ある程度まで自動化する仕組みは不可欠だ。

 エージェントアシストの仕組みをチャットに応用すれば、AIシステムが提案してくるフレーズをそのまま、顧客との応対画面にコピー&ペーストすればよいだけのため、1人のオペレーターが複数のチャットセッションを同時にハンドリングするなど、生産性の向上にもつながっていく。

 次回は、コンタクトセンターのシステム基盤への搭載が進むAI(人工知能)技術の3つのカテゴリーのうち、2つめの「コンタクトセンター運用を容易にするためのAI」について解説する。

中野 正人(なかの・まさと)

ジェネシスクラウドサービス ソリューションコンサルティング本部・本部長。SAPジャパンや日本マイクロソフトを経て2011年にジェネシス入社。ビジネスコンサルタントとして顧客のコンタクトセンター成熟度調査や、その結果に基づくコンタクトセンター高度化プランを多数立案してきた。海外組織とのパイプを生かし、事例情報の収集や海外視察ツアーの企画などに取り組む中で得たコンタクトセンターの将来像に関する幅広い知見を顧客へのコンサルティングに生かしている。