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  • 移動が社会を変えていく、国内MaaSの最前線

社会課題の解決に向け国が推し進めるMaaS支援策【第2回】

愛甲 峻(インプレス総合研究所)
2022年6月27日

前回はMaaS(Mobility as a Service)の基礎知識として、MaaSの概念や歴史、MaaSがもたらす価値や効果を整理した。今回は、MaaSの現状への理解を深めるために、国が主導するMaaS関連施策を整理するとともに、地域によって異なるMaaSの取り組みを分類する。

 MaaS(Mobility as a Service)は、移動の利便性を高めることで、都市や地域が抱える種々の社会課題を解決できると期待されている。その社会実装を後押しするために国は、2019年度からMaaS関連事業を推進している。

国交省・経産省が連携し「スマートモビリティチャレンジ」を推進

 MaaSに関して国が初めて具体的な言及を示したのは、内閣官房が2018年6月に公表した『未来投資戦略2018―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革─』においてである。成長戦略における重点分野の1つである「次世代モビリティ・システムの構築」において、公共交通全体のスマート化を実現する手段として、自動運転の実用化と並んで言及された。

 その後の成長戦略においてもMaaSは、「モビリティ」分野の一要素に位置付けられている。2021年度には「日本版MaaSの推進」として、国土交通省・経済産業省による施策を主軸に、MaaSによる地域交通の改善、まちづくり等に関する方針と工程表が示された(図1)。MaaSが地域交通の再生および観光客の潜在需要の掘り起こしに資するものとして、モデルの創出などを支援する。

図1:「日本版MaaSの推進」における工程表の一部(出所:『成長戦略フォローアップ工程表)』、2021年度)

 現在、国による主要なMaaS関連事業は、国交省および経産省が2019年度に開始したプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」の枠組みにおいて進められている。全国各地でのMaaSや新たなモビリティサービスの実証実験を支援するとともに、最新の知見の共有や地域関係者の連携を深めるのが目的だ。

 スマートモビリティチャレンジにおいては、地域や事業者を連携するためのプラットフォームとして「スマートモビリティチャレンジ推進協議会」が設置されている。2022年5月17日時点で、全346団体(自治体114団体、事業者201者、その他の教育・研究機関や商工会など31団体)が参加する。取り組み事例の共有や会員間のマッチング、シンポジウムなどを展開している。

図2:「スマートモビリティチャレンジ」における推進協議会の位置付け(スマートモビリティチャレンジのWebサイトより)