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  • スマートシティを支えるBIMデータの基礎と価値

都市のデジタル化と3DモデルBIMの必要性【第1回】

東 政宏(BIMobject Japan 代表取締役社長)
2022年6月6日

空間と建物をデジタルで表現するBIM

 建設業のデジタル化において、その根幹をなす街づくりのためのデータ化には2つの側面があります。(1)現時点で存在しないモノを仮想空間で再現するための電子データ化(モデル化)と、(2)既存の建物や道路など既に存在するモノ(フィジカル空間)のデータ化です(図1)。

図1:街づくりのためのデータ化の2つの側面

 前者の代表例が、自動車開発におけるシミュレーションです。すでに新車開発のほとんどは仮想環境で実行されています。建設業界でも同様に、新たに建物を建設する際の設計にデジタルテクノロジーを利用するケースが増えてきています。

 一方、後者の代表例が、コロナ禍で注目されたVR(Virtual Reality:仮想現実)を使ったマンションの内見や美術館などの仮想体験、さらには昨今話題になっている仮想空間を自身の分身(アバター)を使って体験するメタバースなどです(図2、実際の仮想空間)。

図2:VR(Virtual Reality:仮想現実)を使ったオフィス空間の例。図は野原ホールディングスでの実例

 これらのデータを使った街のデジタル化はどのように進められるでしょうか。街のハードウェア面を簡素化すれば、建物(建築)と、土地や景観(土木)と分けられます。筆者は建築が専門なため、以下では建築を例に説明します。

 街は、多くの建物が集まって形成されています。そして個々の建物は建材の集合体です。そのため、街づくりのデジタル化においては、まずは建材の1つひとつをデータ化する必要があります。建材の寸法や形状、仕様、性能いった情報をデータにします。この建材データをやり取りするための標準として欧米で主流になっている手法が「BIM(Building Information Modeling:ビム)」です。

 BIMは、建設プロジェクトに関する、あらゆる情報を仮想空間内で管理・活用する手法です。そのために、設計情報と建材や設備の情報を集約した3D(3次元)の建築モデルを作ります(図3)。

図3:BIM(Building Information Modeling:ビム)の概念

 この時、最も重要なのは、BIMは各種の「Information(情報)」を持っていることです。設計・施工に必要な外形などの情報だけでなく、各種シミュレーションに必要な情報、完成時引渡しに必要な情報、運用段階の情報などを追加・拡張できます。BIMの作成は、建設に特化したデータベースを作るプロセスであり、それは空間を構成する最小単位である建材データの集合体ともいえます。