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ライブラリーによるBIMの流通・共有が可能性を高める【第2回】

東 政宏(BIMobject Japan 代表取締役社長)
2022年7月4日

ライブラリーサービスがBIMの普及を後押し

 では、BIMの最小構成単位であるBIMオブジェクトは、どのように入手できるのでしょうか。

 現在、ネット上には、BIMオブジェクトのライブラリーサービスが複数提供されています。主要な建設設備メーカーが自社製品のBIMオブジェクトを登録しており、設計士らは、そのBIMオブジェクトをダウンロードして使用しています。BIMデータライブラリーには次のようなサービスがあります。

bimobject.com

 「bimobject.com」は、スウェーデンのBIMobjectが2011年に開始したサービスです。製品のBIMオブジェクトを22カテゴリーに分類し、設計士やエンジニア、デザイナーなどの登録ユーザーに無償で提供しています。

図2:「bimobject.com」のBIMオブジェクトの参照画面例

 2022年6月20日時点に公開されているBIMオブジェクトの数は約11万件、登録会員数は約280万人と、世界最大規模のプラットフォームになっています。2020年には、新型コロナウイルス感染症に伴う在宅勤務の増加により、BIMオブジェクトのダウンロードは同年2月からの2カ月間で前年同期の約3倍にまで増えました。

 日本ではBIMobject Japanが運営し、掲載費およびマーケティングデータの提供により収益を得ています。これまで入手困難だった海外の建材情報を1つのサイト上で検索できるため、海外のトレンドやデザイン性のあるインテリア、先進的な建材などを発見する機会にもなっています。2020年からは複数の国内企業との特設サイトも構築しています(表1)。

表1:BIMobject Japanが構築した国内特設サイト(稼働時期順)
提携企業URL
大塚商会https://www.cadjapan.com/special/bim-navi/bimobject/
応用技術https://familybrowser.tobim.app/product
STUDIO55https://studio55.co.jp/bim_object/
CGworkshttps://cgworks.jp/bimobject/
Civil User Group Japan/Civilユーザ会https://cim-cug.jp/library/
エヌ・アンド・アイ・システムズhttps://constdx.com/bimobject/

NBS National BIM Library

 「NBS National BIM Library」は、イギリスの王立英国建築家協会(RIBA:Royal Institute of British Architects)の外郭団体NBS(National Building Specification)が2012年から提供しているBIMオブジェクトの無料ライブラリーです。

 長らく、建材設備のBIMオブジェクトを対象にした網羅的なデータベースは存在していませんでした。数年前に大規模かつ複雑なファシリティマネジメント(FM)業務をBIMで運用しようとすれば、メーカー各社の設備機器資料を確認したりヒアリングしたりしながら詳細情報を入手し、独自でデータベースを整備しなければなりませんでした。

 BIMオブジェクト自体、設計士が自ら作らなければならず、手間も時間もかかっていました。しかも、そのモデル化された建材を実際に購入できるかどうかが定かではないケースもありました。