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  • 現場のリーダーが考えたDX人材像を示す「DXスキルツリー」

DXの現場導入を進めるテクニカル人材と求められるスキル【第4回】

磯村 哲、西山 莉紗、伊藤 優、中道 嵩行
2022年11月4日

前回から、DX活動が求める人材像をまとめた「DXスキルツリー」に登場する人材像を説明しています。前回はビジネス人材について説明しました。今回は、テクニカル人材について説明します。テクニカル人材は主に、DX活動における後半のステージを担いますが、その専門性は多岐に渡ります。

 図1は「DXスキルツリー」の全体像です。今回は、このうちの赤く塗った部分、テクニカル人材について説明します。

図1:DXスキルツリーの全体像。赤く塗った部分が今回取り上げる人材

 DX活動は大きく、構想、価値PoC(Proof of Concept:概念実証)、技術PoC、開発、運用の5つのステージからなっていると説明してきました(図2)。これら5つのステージのうち、今回説明するテクニカル人材は、技術PoCから運用までの後半のステージで活躍します。

図2:DX活動における5つのステージ

 DX活動の前段である構想から価値PoCのステージは、DX活動のコンセプトを構築し、そのコンセプトが会社に価値をもたらすかどうかを検証するフェーズです。そこでは第3回で説明したビジネス人材が活躍し、テクニカル人材が動き出す前に、確認すべき事柄の合意形成を図ります。コンセプトの価値に納得できる状態になって初めて技術PoCが可能になります。

 ここからは(1)技術PoC、(2)開発、(3)運用の各ステージで活躍するテクニカル人材を説明していきます。

(1)技術PoCステージで活躍するテクニカル人材

 技術PoCステージは、コンセプトが技術的に実現可能かを検証するフェースです。ここでは、データサイエンティスト、データエンジニア、アプリケーションエンジニアが活躍します(図3)。

図3:技術PoCステージで活躍するテクニカル人材(赤塗り部分)

データサイエンティスト

 集まったデータを元に、機械学習モデルを実際に学習・構築し、その精度などを評価する役割を担います。機械学習モデルを構築するための基礎知識が必要です。ですが近年は、種々のローコード/ノーコードツールが登場しており、プログラミングスキルは必須ではありません。むしろ重要なのは、現場で受け入れられるモデルを構築するスキルです。それには統計知識や柔軟なモデル構築力、説明力が必要になります。

データエンジニア

 データを、データサイエンティストやユーザーが扱える形に整理する役割を担います。実際に動いているシステムからデータを取り出し使える形にするためには、統計知識を持つデータサイエンティストだけでは不十分です。ソフトウェアの知識を持つデータエンジニアがいて初めて、散逸したシステムから必要なデータを効率的に取り出せるのです。

 機械学習モデルの構築は、上述したように多くのツールを通じて誰でも比較的簡単に実施できるようになってきました。それだけにDXの効率を決めるのは、むしろデータエンジニアの質であるとも考えられます。

アプリケーションエンジニア

 データサイエンティストが構築した機械学習モデルを、ユーザーが実際に使うためのアプリケーションを構築します。Webアプリケーションやスマートフォン用アプリケーション、デスクトップアプリケーションなど、動作環境の違いから、さまざまな技術があり、それらに精通していくことで専門性が広がります。

 DX活動におけるコンセプトの検証としては、機械学習モデル自体だけでなく、ユーザーから見たUI(User Interface)の操作性が肝になることもしばしばです。ユーザーフレンドリーなアプリケーションを効率的に構築するためにアプリケーションエンジニアは、時にはUX(User Experience)デザイナーと協調する必要があります。