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  • 現場のリーダーが考えたDX人材像を示す「DXスキルツリー」

DXスキルツリーの活用方法と今後の発展方向【第5回】

磯村 哲、西山 莉紗、伊藤 優、中道 嵩行
2022年12月8日

将来にわたり重要な人材群は3種

 こうした考察から、将来にわたって重要だと浮かび上がってくるのは、以下の3種の人材群だと思われます。

人材群1:ビジネスリーダー・UXデザイナー・ビジネスアナリスト・DXプロデューサーなど

 「なぜそれをするのか」「何をしたいのか」「本当は何を求めているのか」など答えよりも問いを発する、あるいは簡単には顕在化・言語化できない部分を扱う人材です。多様な視点や自分を信じる力など経験や性格に依存するため希少です。

人材群2:ビジネスプロセスマネジャー・プロジェクトマネジャー/スクラムマスター・事務局など

 チームワークなど人間に関わるマネジメントを担う人材です。個々の人間性を尊重しつつ生産性の高いマネジメントができる人材は希少です。

人材群3:シニアデータサイエンティスト・データアナリスト・アプリケーションエンジニア・ビジネスプロセスエンジニア・DXストラテジストなど

 局面に応じて新しいものを都度生み出す人材です。創造性と挑戦心を併せ持たねばならず今後もおそらく希少でしょう。

 これら3種の人材群は、個人や企業のリテラシーが高まることを前提に、デジタル色を消した一般的な切り口になっています。しかし、リテラシーの向上速度よりもデジタル技術の発展速度が大きければ、この考察の前提はくつがえり、デジタル技術人材の重要性が増すことになります。

 あるいは、個人の性格や相性に合わせてチームを構成しタスクを振り分けられるAI技術が発展すれば、マネジャー職の役割は減少します。創造性が要素の有限な組み合わせに過ぎないと判明すれば、新しいものを都度生み出すことほどAI向きな仕事はありません。前提の置き方で予測結果は変わりますが、みなさんは、どう予測されるでしょうか。

DXスキルツリーを起点にDX人材とスキルの共通言語化を図る

 DXスキルツリーをまとめるに当たり筆者らは、DXの流れやDX人材像は協調領域、すなわち非競争領域だと考えてきました。DXは経営戦略と現場課題の交点に表れるDXニーズを産業競争力に変える手段であり、その内容はともかく方法論を隠す理由はないからです。

 それよりはむしろ、業界や取引先、社会全体のDXが進展することで、より“Connected(つながった)”なエコシステムが実現し、顧客により早く大きな価値を届けるほうが、それぞれの利益は大きいのではないでしょうか。

 DXに関しては今、共通言語があるようでない状態です。DXスキルツリーが起点になり、DX人材とスキルの共通言語化が進む、あるいは議論が深まることを願っていますし、そのために協力してくれる仲間を増やせればと思っています。興味のある方はぜひ、筆者らにご連絡ください。

磯村 哲(いそむら・てつ)

小野薬品工業 デジタル戦略企画部 部長。三菱化学、ゾイジーン、モレキュエンスにて研究と新規事業立ち上げを担当。地球快適化インスティテュート チーフアナリスト、三菱ケミカルホールディングス チーフコンサルタント/データサイエンティストを経て2021年に小野薬品工業に入社。データサイエンスとビジネスモデルを軸としたデジタルビジネス変革に従事している。

西山 莉紗(にしやま・りさ)

みらい翻訳 エンジニアリング部 エンジニアリングマネージャー。2006年に日本IBMに入社し、自然言語処理に関する研究と、お客様PoC向けのプロトタイプ開発および商用ソフトウェア開発に従事。2018年に三菱ケミカルホールディングスのDX推進組織にデータサイエンティストとして加入し、デジタル技術を利用した社内文書の業務活用を推進する。現在は機械翻訳エンジン研究開発チームのマネージャーとして、多言語業務に関するお客様のDXを間接的に支援している。

伊藤 優(いとう・ゆう)

三菱ケミカルグループ データ&先端技術部 データサイエンティスト。2017年、三菱ケミカルホールディングスのDX推進組織に発足期より参画。現場で使われる機械学習モデルを志向し、テクノロジーと人との橋渡しに軸足を置く。画像解析を中心に数々のプロジェクトに従事し、製造や研究の現場への導入・運用実績を持つ。

中道 嵩行(なかみち・たかゆき)

製造ベンチャー企業に在籍。三菱化学にてS&OP、事業企画、M&A等を担当し、2019年に三菱ケミカルホールディングスのDX推進組織に参画。チーフデジタルアナリストとしてDXプロジェクトの組成・実行・支援、人材育成の方法論構築などに従事するほか、デジタルビジネスチームのリーダーも務める。2022年より現職。