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  • DX時代の障壁と突破口

DX推進現場が具備すべきテクノロジー方法論(DXプロセスモデル編)【第7回】

塩野 拓、荻原 健斗(KPMGコンサルティング)
2023年4月3日

前回は、DX推進標準化モデルにおける「DXテクノロジーモデル」を構成する「DXソリューションモデル」と「DXプロセスモデル」のうち、先進事例などから自社の経営戦略に整合するDX施策に落とし込むための「DXソリューションモデル」について解説した。今回は、DXソリューションモデルから導き出したテクノロジーを導入するための「DXプロセスモデル」について解説する。

<第7回のポイント>

  • DX推進においては、アジャイル開発が有効であり、OODAサイクルを複数回、繰り返す。システム部門や外部のベンダーに丸投げせず、自らがDXを推進することが効率的である
  • DX施策のライフサイクル上で発生した課題と要因、その解決策を一覧化し、体系立てて整理したものを全社に共有・公開する。それにより全社一丸となってDX施策を効果的かつ効率的に推進していける

 前回も指摘したように、DX戦略を策定し、DX推進人材を定義・配置しても、DX施策を創出できなければ“ガソリンのないエンジン”の如く、全社DXは推進できない。そのガソリンに相当するのが、DX推進標準化モデルにおける「DXテクノロジーモデル」である。前回の「DXソリューションモデル」に続き今回はDXプロセスモデルについて解説する(図1)。

図1:DX推進標準化モデルと前回と今回解説する領域

“Quick Win”領域にアジャイル開発手法を適用する

 前回で述べたDX施策のアイディエーションフェーズを経ると、業務要件やシステム要件などを整理・定義する設計フェーズや、導入・構築フェーズへと進む。

 導入予定のテクノロジーの要素技術や性質にもよるが、基本的には、スモールスタートで“Quick Win(早期の効果創出)”ができる領域に対し、アジャイル開発を適用したPoC(Proof of Concept:実証実験)を実施していくことを推奨する。

 読者の多くが既に認識している通り、ウォーターフォール型で数年かけて導入するといった従来型の大規模システム導入のスピード感では、テクノロジーの進歩が速いDXの潮流には取り残されてしまうことが多い。

 VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)時代において、ビジネス環境の激しい変化に追いつき対応していくためには、先進デジタル技術をスピーディーに取り込んでいく必要がある。そのための1つの手法がアジャイル開発手法であり、DXにおいては切っても切り離せない導入手法である(図2)。

図2:ウォーターフォール型とアジャイル型の比較

 アジャイル型での設計フェーズにおける要件定義などでは極力、業務フローなどは新規に作成せず、既存の手順書などで要件を確認する。打ち合せも、ウォーターフォール型のように数回にわたって実施はせず、要点のみを押さえ素早く導入・構築フェーズに移行することを優先する。

 導入・構築フェーズでも、テスト仕様書などのドキュメント作成は必要最小限にとどめることが望ましい。よくある失敗例として、業務担当者がシステム部門や外部ベンダーに要件だけ伝え、後は丸投げしてしまうケースが挙げられる。だがDX施策推進においては、現場リーダーが施策オーナーとして、システム部門や外部ベンダーとを隔てたレビュー等は実施せず、業務担当者も交え一体になって検証と実装を進めていくことが肝要である。