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Catena-X、自動車産業のデータ駆動型バリューチェーンを実現する

Catena-X 取締役会 メンバー クラウス・クレマース氏

阿部 欽一
2023年7月26日

 Catena-Xの中核グループが立ち上がったのは2021年のこと。2022年にはオープンソースのコードを開発し、そのユースケースに基づいたアプリケーションの提供を開始した。コア部分は2023年に稼働を開始しており、今後は「包括的なデータセットを持つ最大のデジタルツインライブラリーを提供する予定だ」とクレマース氏は話す。

 その推進においては「信頼できるメンバーでコミュニティを作り、協力している状況」(クレマース氏)という。例えばドイツでは、28のパートナーからなるコンソーシアムが立ち上がり、世界では産業界から130〜140のメンバーが集っているなど、「オープンアーキテクチャーを実現するための協力体制ができている」とクレマース氏は自信を見せる。

 事業体としては、「Catena-Xにはすでに27万5000が参画している」(クレマース氏)という。彼らは、「巨大な市場とデータエコシステムに参加することで、データを共有し、アプリケーションを利用できる状況にある」(同)わけだ。コミュニティをさらに拡大するために、「日本の自動車産業とも話をしている」とクレマース氏は明かす。

Catena-Xは各社が交換・共有するデータを収集しない

 ただクレマース氏は、「グローバルなソリューションを構築するには時間とスキルがかかる」と指摘する。その一方で、「問題解決にはスピードが必要だ」(同)とも言う。必要とするデータ交換のために、世界が協調しグローバルなスペースを構築・運用するか、国あるいはOEMごとに、それそれのサプライチェーン内で単独で取り組むのか。クレマース氏は、「今こそ、みんなが協調し成功するタイミングにある」と強調する。

 Catena-Xのプラットフォームは、「互いが対話できるように設計され、あらゆるユースケースに対応できる」(クレマース氏)という。データ交換を促進するために、「企業の参加を促すインセンティブも用意しながら、中立的なガバナンスを構築し、グローバルに活発なデータ交換を高い信頼性をもって実現していく。アプリケーション開発キットにより、中小企業とのコラボレーションも促していく」(同)考えだ。

 その一環として、Catena-Xは各社が交換・共有するデータを収集しない。相互接続のための「コネクタ」をドイツの「Eclipse Foundation」の元で開発していく(図2)。「EDC(Eclipse Dataspace Connector)」などのオープンソースソフトウェアが土台になる。EDCはCatena-Xのマーケットプレイスから取得でき、認証などデータ共有に必要なすべての機能を提供する。

図2: Catena-Xのデータ交換では「コネクタ」と呼ぶ接続用ソフトウェアを利用する

 OEMやサプライヤー、部品メーカーは、データを共有したいときだけコネクタを使用すれば良い。すべてのアプリケーションプロバイダーも同様にコネクタを利用しデータを交換・共有できる。クレマース氏は、「Catena-Xは、データドリブンなバリューチェーンを構築し、データ交換・共有スペースにあるアプリケーションを相互運用ができるデータプラットフォームになる」と改めて強調する。

 2023年は、各社の利用開始を促し、「迅速に利用できるようサポートしていく」(クレマース氏)。日本を含む自動車業界全体に対し、「皆さんと共に新しい価値を開拓していきたい」とクレマース氏は訴えた。

クレマース氏による講演動画「『Catena-X』が実現する自動車産業のオープンで協調的なデータエコシステム」をこちらで、ご覧頂けます。