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  • データドリブン経営に向けたERP再入門

複合型の意思決定のためのERPシステムの基本構造と導入効果【第2回】

東 裕紀央、船橋 直樹(日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 事業戦略本部)
2023年12月12日

前回、企業経営に影響を与える要素が増え続け、その変化も加速している現状では“複合型の意思決定”が必要なことを解説した。そのために求められるツールとしてERP(企業資源経営)システムに触れた。今回は、ERPシステムが、どのような機能・構造を持ち、どのような導入メリットをもたらすかについて説明する。

 第1回に紹介したとおりERPは「Enterprise Resource Planning」の頭文字を取った略語で、日本語では「企業資源計画」と訳される。“ヒト・モノ・カネ”といった企業経営の中核になる重要資源の情報を一元管理することで無駄のない経営を可能にする考え方および手法だ。

 ERPの源流は、生産管理手法の「MRP(Material Resource Planning)」にある。“必要なものを、必要な時に、必要なだけ”製造するために購買や各種リソースの最適化を図る。生産のためのMRPから派生し、企業経営のための手法として確立されたのがERPであり、それを実行するための情報システムがERPシステムである。

業務領域の別に必要な機能群をモジュールとして提供

 ERPシステムの多くは、業務領域の別に必要な機能群を「モジュール」としてまとめ、そのモジュールを組み合わせることで企業システムを構成する。例えば米オラクルのクラウドERPサービスは主要モジュールとして、財務、調達、サプライチェーンと製造管理、経営管理を提供している(図1)。

図1:ERPシステムは必要な業務機能を「モジュール」として提供する。図は「Oracle Fusion Cloud Applications」(米オラクル製)の例

 財務モジュールが持つ管理機能は、会計、買掛・売掛金、経費、資産、リース、プロジェクト会計などである。サプライチェーンと製造管理モジュールは、サプライチェーン計画、製造工程、受注、在庫、引当、ロジスティクスなどの管理機能を提供する。

 複数のモジュール間、つまり複数の業務領域間でデータを共有することでERPは、複合的な意思決定を下し最適な打ち手を実行するための基盤として機能する。データ共有のためのアーキテクチャーは、ERPベンダーを問わず、ある程度共通している。統一されたデータモデルと、共通のワークフローエンジンを備える共通基盤上に、モジュール型のアプリケーションを構築し、一貫したユーザーインタフェース(UI)を介した利用環境を提供する。

 昨今の共通基盤には、AI(Artifical Intelligence:人工知能)/ML(Machine Learning:機械学習)やBI(Business Intelligence)、API(Application Programming Interface)などの機能が含まれることも多い。