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  • シン・物流、DXで変わるロジスティクスのこれから

デジタル時代が求めるシン・物流の4つの基本領域【第1回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年1月10日

さまざまな業種でDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが本格化する中、そこから生まれる新ビジネスを支える社会インフラとしての物流機能の重要性は高まる一方です。ネット事業が広がれば広がるほど、物理的なモノの動きも増え、それを滞りなく流通させるためには、DX時代が求める物流、すなわち「シン・物流」を実現しなければなりません。今回は、シン・物流が対象にする物流の全体像を、その領域ごとに解説します。

 企業経営における物流の重要性が、ますます高まっています。新型コロナ感染症(COVID-19)によるパンデミック(感染爆発)以降、より強靭なサプライチェーンの構築が求められ、巨大な物流センターの建設が相次いでいます。ネットビジネス(EC:電子商取引)市場の、より一層の拡大に伴い“インターネットのスピード”に合わせた物流システムの再構築も求められています。

 これまでも「物流革命」という言葉が、原材料の調達から製品が生活者の手に届くまでの一連の流れを一括管理する「ロジスティクス(Logistics)」の高度化が進む過程で、しばしば使われてきました。しかし、物流は今、これまで以上のスケールをもって大きく変わろうとしています。

 もはや物流は、「単にモノを運ぶ」という機能を提供するだけではありません。情報革命の波の次に現れた、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、5G(第5世代移動体通信)などのデジタル技術を戦略的に活用するDX(デジタルトランスフォーメーション)による、さらなるパラダイムシフトとして、従来の物流革命の波を大きく超えるパラダイムシフト、すなわち「シン・物流革命」を起こそうとしています(図1)。

図1:シン・物流時代への流れ

 シン・物流革命の進捗にあわせて展開されるDX時代の物流システムが「シン・物流」です。デジタル技術の活用により、完全な自動化や無人化を推進します。既に、ロボティクス(ロボット工学)分野の研究・開発の成果が、モノの運搬や庫内作業などで実用化の先鞭を付け始めています。シン・物流は今後、世の中でより強力なプレゼンス(存在感)を発揮していくことでしょう。

物流の基本4領域を高い戦略性をもって再構築する

 ではシン・物流は今後、どのような領域を対象に進化していくのでしょうか。以下では、シン・物流が対象にする機能を、(1)輸配送、(2)保管・在庫、(3)物流センター業務(荷役・物流加工)、(4)包装・梱包の4つの領域に分けて紹介します(図2)。物流の基本である、これら4領域において、必要な機能を高い戦略性をもって再構築することがシン・物流へとつながるのです。

図2:シン・物流が対象にする改善領域