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- シン・物流、DXで変わるロジスティクスのこれから
モーダルシフト(複合一貫)輸送に不可欠な無人搬送フォークリフト【第4回】
コストメリットに加え荷役品質も向上
AGFの導入効果としては大きく、(1)生産性の向上、(2)作業環境の改善、(3)荷役品質の標準化、(4)24時間対応の実現などが期待できます(表1)。すなわち、人件費削減などのコストメリットの享受だけでなく、荷役品質についても大きな向上が見込めるわけです。
効果 | 概要 |
---|---|
生産性の向上 | 有人オペレーターが不要になり人件費を削減できるほか、荷扱いや構内運搬がスムースになり荷役の生産性が高まる |
作業環境の改善 | 低騒音・低振動の作業により、関連作業者の作業ストレスが軽減される。労働災害や健康被害のリスクも低減する |
荷役品質の標準化 | 安定した速度でばらつきない作業が可能になり、荷役品質の標準化が図れる。労働災害や健康被害のリスクも低減する |
24時間対応の実現 | 無人で24時間稼働できるため、通常の作業時間外や土日・祝日などのオペレーションが可能になる |
鉄道輸送における一貫パレチゼーションの効率を高める仕組みとして「アップスロープシステム」があります。コンテナを搭載した鉄道車両の荷役を自動化するもので、車両内に設置したリフトやスロープを使って荷物を積み下ろしします。コンテナ車両が到着するとリフトでコンテナを持ち上げ、専用のスロープを使ってトラックにコンテナを搬入するのです。
アップスロープシステムで運ぶ貨物は、基本的にはパレット荷で構成された標準的なコンテナが対象になります。ただアップスロープシステムは現状、導入コストが高いことと、リフトやスロープの保守・修理コストがかかることがボトルネックになっており、その課題を解決する必要があります。
ちなみに食品物流企業のF-LINEは大型の31フィートコンテナにGPS(全地球測位システム)を搭載し鉄道輸送の動態管理を実現しました。以前は12フィートコンテナによるバラ積み輸送でした。これを31フィートに切り替えることで、パレット荷での積載率低下を回避し、トラックドライバー不足に対応したのです。
貨物輸送管理システムなどとの連携が不可欠に
AGFの導入に際しては、貨物輸送管理システムなどとのシステム連携を構築・強化する必要があります。複数の事業者間でシステムの相互運用性が低いと情報共有が難しくなり、貨物の輸送状況を正確に把握できまないからです。
例えば、JR貨物が鉄道輸送した貨物をAGFを使って他社や委託先に引き継ぐ場合、引き継ぎ先のシステムとも情報を共有できなければなりません。JR貨物自体は、鉄道貨物の受付から輸送、配達までの一連のプロセスを貨物輸送管理システムで管理しています。同システムと連携すれば、輸送状況や配達予定時刻、輸送コストなどの情報をリアルタイムに共有できます。
そうしたシステム構築・連携では、鉄道貨物輸送に限定するのではなく、鉄道荷役や通運部門、さらにはサプライチェーン全体での高度なシステム統合が求められます。AGFを本格導入することは、従来のレガシーシステムからの脱却を検討するタイミングであるとも言えます。
鈴木 邦成(すずき・くにのり)
日本大学教授、物流エコノミスト。博士(工学)(日本大学)。早稲田大学大学院修士課程修了。日本ロジスティクスシステム学会理事、日本SCM協会専務理事、日本物流不動産学研究所アカデミックチェア。ユーピーアールの社外監査役も務める。専門は、物流・ロジスティクス工学。主な著書に『物流DXネットワーク』(中村康久との共著、NTT出版)『トコトンやさしい物流の本』『シン・物流革命』(中村康久との共著、幻冬舎)などがある。
中村康久(なかむら・やすひさ)
ユーピーアール技術顧問。工学博士(東京大学)。NTT電気通信研究所、NTTドコモブラジル、ドコモUSA、NTTドコモを経て現職。麻布高校卒業後、東京大学工学部計数工学科卒業。元東京農工大学大学院客員教授、放送大学講師。主な著書に『Wireless Data Services-Technology、 Business model and Global market』(ケンブリッジ大学出版)、『スマートサプライチェーンの設計と構築』(鈴木邦成との共著、白桃書房)、『シン・物流革命』(鈴木邦成との共著、幻冬舎)などがある。