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物流現場を“コネクテッド”に変える携帯電話技術【第6回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年3月21日

物流現場の業務効率を高めるためには、多くのモノや製品の位置をリアルタイムに把握できる必要があります。しかし中小企業が90%以上を占める物流現場では目先の運用を回すのに手一杯で、どうしても手荷役や手作業に頼らざるを得ないのが現状です。そんな物流現場へのセンサーやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)導入を進めるための通信インフラとして期待されるのが携帯電話システムです。

 物流現場には、輸送対象である荷物はもとより、その移動効率を高めるための補助的なツール類も多数存在します。物流効率を高めるためには、そうした道具類の位置なども把握できていなければなりません。

 例えば、パレットが、その1つ。複数の荷物の載せられる台ですが、これをフォークリフトなどを用いて台ごと移動させることで、荷役、輸送、保管までの作業効率を高めます。このパレットは、大規模な倉庫や物流センターでは1カ所で5万〜10万枚が利用・保管されることがあります。

 近年のEC(電子商取引)需要の爆発的なニーズの増大に応えるために、倉庫や物流センターへのロボットやAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)やAGF(Automated Guided Forklift:無人搬送フォークリフト)の導入が進んでいます。WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)との連携では、AGV/AGFの位置や走行速度、加速度などをリアルタイムに管理する必要があります。

RFIDタグによる貨物管理

 個々のパレットや、その上に保管された製品、AGV/AGFなどに対し、そのIDや所在、温度、振動状態といった状況を可視化するためには、まず、パレットなどにRFIDタグやセンサーを装着し、必要なデータを取得しなければなりません。

 RFIDタグの一例にユーピーアールが開発した「DXタグ」があります(図1)。小型・軽量のアクティブRFIDタグとリーダーを組み合わせることで、遠隔からの在庫管理や棚卸業務を可能にします。RFIDタグとリーダー間は、920MHz帯の無線を利用し、リーダーから300メートル前後をカバーし、その範囲にあるパレットやフォークリフト(実際には、それらに装着されているDXタグ)を特定します。位置の把握にはGPS(全地球測位システム)が多用されていますが、物流施設など屋内での位置把握は困難です。

図1:「DXタグ」の特徴

 さらに、パレットやAGV/AGFなどの状態をリアルタイムに把握するためには、それぞれが“コネクテッド(ネットワークにつながっている)”である必要があります。RFIDタグやセンサーで集めた各種データをネットワーク経由でクラウドに送って初めて、可視化や分析、トレーサビリティなどが実現できます。