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輸送効率を高めるパレットの位置をデジタルで可視化する【第11回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年6月6日

荷役作業の効率を高めるための道具の1つに、貨物を載せる荷台「パレット」があります。パレットを利用すれば複数の荷物を効率良く輸送できるため、2024年問題によるトラックドライバー不足の解消にも有効です。ただパレットの紛失も多く、共同回収・共同利用の検討が進んでいます。今回は、パレット業務を対象にしたデジタル技術適用について解説します。

 「パレット」は、複数個の荷物を載せて一度に運ぶための荷台です。下部にフォークリフト用の差し口があり、フォークリフトなどの爪を差し込んで荷物を持ち上げ移動させます。パレットには木製、プラスチック製、金属製、紙製など、さまざまな材質が使われており、材質により使用目的や特性が異なっています。

メーカーから卸への一方通行のため紛失機会も多い

 輸送や保管にパレットを使えば、荷物の積み下ろしにフォークリフトが使え作業時間を大幅に短縮できるうえ、現場のドライバーや作業員の身体的負担も軽減できます。国内には現在、約2億〜3億枚のパレットが存在するとされます。

 パレットが最も多用されるのは、メーカーの工場から卸売業の物流センター内での荷さばきまでだと考えられます。取扱品目にもよりますが、メーカーからの出荷は、バラ積みではなくケース単位やパレット単位になることが多いためです。

 パレット単位の貨物を受け取った卸売業の物流センターでは、それをケース単位やピース単位でピッキングし、小売業の物流センターや営業所、店舗などに出荷します。店舗納品では、かご車単位やバラ出荷になることもあります。多品種少量をミスなく出荷するために、自動倉庫やデジタルピッキング、デジタルアソートなど最新のマテハン機器や情報システムが導入されているのです。

 ただ、メーカーの工場から卸売業の物流センターへの納品に使われたパレットは一方通行になり、行き場を失い、紛失してしまうことも少なくありません。パレットの紛失率は10%を超えるとされます。メーカーにすれば、パレットを納品のたびに新規購入すれば相当のコスト高になるだけに、回収や補填に大きな経済的負担を強いられています。

 パレットの紛失防止や回収負担の軽減策となるのがレンタルパレットです。パレットのレンタル企業がメーカーなどに貸し出し、卸売業の物流センターにトラックを差し向けて回収します。パレットを自社保有するかレンタルするかで物流にかかるコストや効率が大きく変わります。

 レンタルパレットを中心に、パレットの位置や挙動を管理するために、RFIDタグ(ICタグ)やLPWA(Low Power Wide Area:低消費電力無線)ネットワークなどの導入が始まっています。LPWAは省電力で半径数キロメートルから数十キロメートルまで通信できる無線規格です。データの通信速度は携帯電話システムより低速ですがバッテリーだけで年単位の利用が可能です。