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円滑な物流を支える仕分け作業のデジタル化が進展【第14回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年7月18日

宅配便は扱う荷物の形状やサイズが多岐にわたる荷物への対応が課題

 超大型の仕分けシステムが導入されている物流現場が宅配便の仕分けセンターです。例えば、ヤマト運輸が東京・羽田に持つ仕分けセンター「羽田クロノゲート」は日本最大級とされ、一般世帯などに配達する莫大な量の荷物を仕分けています。

 宅配便仕分けで問題になるのは、スーツケースやゴルフバッグ、スキーなど、扱う荷物の形状やサイズが多岐にわたる点です。従来の自動仕分け装置では、荷物の形状などが装置のスペックを超えると搬送不可能になってしまっていました。

 そこで羽田クロノゲートでは、荷物に合わせて自動調整・自動制御ができる自動仕分け機を導入することで、さまざまな荷物に対応しています。具体的には、フィブイントラロジスティクス製の「クロスベルトソータ」と「スライドソータ」を採用。前者は荷物の大きさや形状に合わせてモーター速度を自動調整し柔軟性を確保し、後者は小型のターンローラーにより小口仕分けを実現しています。

 仕分け作業は通常、1次仕分け、2次仕分けなどと複数回実施されます。宅配便であれば、コンビニエンスストアや営業所などでの集荷の後、ゲートウェイ型の巨大拠点での仕分けを経て、エリアを統括する大型の宅配便センター(ベース)に持ち込みます。ベースで行先別に仕分けし、各エリアの宅配便センターに運び、そこで届け先ごとに、さらに仕分けし、直接あるいは営業所経由で届け先に配送します(図2)。

図2:宅配便の仕分けスキーム

 このように宅配便の流れを見てみると、宅配便を円滑かつ迅速に届けるうえで、仕分け作業が重要な役割を担っていることが分かります。

小ロットの仕分けへの対応ニーズが増加

 大ロットの仕分けだけでなく、小ロットの仕分けに対応できるシステム構築需要も増えています。小ロットの場合、どうしても手作業での仕分けを余儀なくされることが少なくありません。しかしネット通販(EC:電子商取引)の取扱量が加速度的に増加するなか、小ロット、多頻度小口の仕分けの効率をこれまで以上に高める必要性が高まっているのです。

 そこで注目されているのがアーム式の仕分けロボットです。ただしアーム式仕分けロボットの機能は仕分け作業に限定されるため、仕分けした物品の運搬についてはAGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車)などを併用する必要があります。

 アパレルでは、ネット通販大手のZOZOTOWNが、吊り下げ式高速仕分けシステム「ポケットソーター」を日本で初めて採用しました。ピッキングした衣類やアクセサリーなどを「ポケット」に入れて、梱包エリアまで自動搬送する仕組みで、作業者数を半減できるとしています。

 仕分けシステムの高度化が進むことで、物流センター業務全体の完全自動化、そして無人化が実現できる時代が確実に迫ってきています。

鈴木 邦成(すずき・くにのり)

日本大学教授、物流エコノミスト。博士(工学)(日本大学)。早稲田大学大学院修士課程修了。日本ロジスティクスシステム学会理事、日本SCM協会専務理事、日本物流不動産学研究所アカデミックチェア。ユーピーアールの社外監査役も務める。専門は、物流・ロジスティクス工学。主な著書に『物流DXネットワーク』(中村康久との共著、NTT出版)『トコトンやさしい物流の本』『シン・物流革命』(中村康久との共著、幻冬舎)などがある。

中村康久(なかむら・やすひさ)

ユーピーアール株式会社技術顧問。工学博士(東京大学)。NTT電気通信研究所、NTTドコモブラジル、ドコモUSA、NTTドコモを経て現職。麻布高校卒業後、東京大学工学部計数工学科卒業。元東京農工大学大学院客員教授、放送大学講師。主な著書に『Wireless Data Services-Technology, Business model and Global market』(ケンブリッジ大学出版)、『スマートサプライチェーンの設計と構築』(鈴木邦成との共著、白桃書房)、『シン・物流革命』(鈴木邦成との共著、幻冬舎)などがある。