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物流センターの事務作業時間を増やす伝票処理をRPAで自動化【第15回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年8月8日

物流センターにおける事務作業時間を増やす要因の1つに伝票処理があります。センター内では、さまざまな伝票を取り扱っており、その対応が現場の負荷になっています。この伝票処理を自動化するためのツールとして注目されるのが「RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)」です。今回は、物流センターの伝票処理におけるRPAを使った自動化について説明します。

 物流現場では、ピッキングなどの作業はもとより、一連の事務作業が発生しています。受発注データを元に注文書やピッキングリストを印刷し、そのリストを元にピッキング作業を実施。そのうえで出荷案内書を発行して商品と照合し、送り状を発行するなどです。そこには、さまざまな種類・形式の伝票が存在します。

 結果、多くの物流企業が、受注情報のデータ入力や、注文の確認・通知、出荷依頼書や納品書の発行、配送指示など、手入力による定型事務作業に追われています。なかでも発注書のメール送信や運用システムへの登録は時間がかかる作業です。

繰り返す定型業務の効率化には「業務の標準化」が前提に

 こうした定型事務作業の効率を高めるためのツールの1つとして期待されるのが「RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)」です。RPAは、「事前に決められた手順を自動化する仕組み」であり、人間の作業者などに代わって、単調で膨大な量に及ぶ作業であっても定められた手順を自動的に実行します。その手順は、RPA専用ソフトウェアを用いれば、プログラミングやITに関する専門的知識を持たない担当者が作成できます。クラウド型RPAツールなら初期投資を抑えられます。

 RPAの導入により、単調なデータ入力や修正・更新、各種帳票の作成など、反復的な定型業務の自動化・省力化が期待できます。導入効果は、対象業務が、「繰り返す定型業務でありながら作業ミスが発生しやすい」場合に、より大きくなると考えられます。ただし、ルーチン業務をこなすというRPAの特性を考えれば、業務の標準化は必須条件です。

 対象業務には、データの検索や、集計、加工、登録、報告などが挙げられます。在庫管理・棚卸における最新状況へのリアルタイム更新などへの適用も可能です。

 荷主が運用管理する販売管理システムなどとの配送指示や実績データなどの交換用途にも対応できます。物流センターのWMS(倉庫管理システム)から入出荷の日時・スケジュール、問い合わせ番号、該当する運送会社などを抽出し、荷主側のシステムにアップロードします(図1)。出荷実績や在庫情報などのバックアップ作成もRPA導入で省人化が図れます。

図1:RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)によるWMS(倉庫管理システム)との連携例

 24時間体制で夜間にデータ処理を実施している物流センターでは最近、人手不足などから夜間スタッフを昼間業務に割当てる必要が出てきています。その際、注文データに基づく出荷依頼の取り込み処理や、帳票印刷、出荷準備といった一連の流れをRPAに任せれば、夜間スタッフを昼間業務にシフトできます。人員配置の刷新によりランニングコストを20~30%以上削減できるとも考えられています。

 例えば物流企業のA社は、営業時間外に受発注処理を実施するために夜間スタッフを配置して対応してきました。しかし、夜間スタッフの負担は重く、改善の必要性を感じていました。そこで、RPAを導入し夜間作業の自動化を進めた結果、夜間スタッフの労働負担の軽減だけでなく、人手が足りない昼間業務に回すことで、労働力の有効活用さらには作業効率化を実現できました。