• Column
  • シン・物流、DXで変わるロジスティクスのこれから

自動梱包機へのAI活用で自動化・ロボット化が加速【第16回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年8月22日

梱包ロボの登場で変わる庫内オペレーション

 AI技術を含めた梱包プロセスの自動化を推進すれば物流センター内の業務効率化は大きく前進します。入荷作業であれば、無人搬送フォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)による積み込み・積み下し、デパレタイズロボットによるパレットからの荷物の取り出し、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)による格納・保管エリアへの運搬までを完全に自動化することも可能です。

 さらに自動倉庫などへの保管から、DPS(デジタルピッキングシステム)/DAS(デジタルアソートシステム)によるピッキング・仕分け、出荷エリアへのAGV運搬までをつなげれば、理論上、物流センターの一連のプロセス全てを手作業に頼らない無人化できるのです(図2)。

図2:完全無人化された物流センターのイメージ

 実際、ユニクロの有明流通センターでは、荷卸しから検品、保管、出庫までの自動化が図られています。一連の物流工程をパレット単位で実施し、仕分けエリアで段ボール箱に自動梱包し、方面別仕分けソーターなどを用いて出荷処理を行っています。自動倉庫には「自動保管倉庫」と「自動出庫倉庫」を設け、前者では標準商品を保管し、後者で高頻度で出荷する売れ筋商品を扱います。

 AI技術の導入により、経験と勘が重視されてきた梱包の微調整も、自動梱包機が担えるようになってきました。物流センターの運営において時間と手間のかかる梱包作業が自動化できれば、これまで以上に迅速な出荷体制を人的エラーのリスクなしに構築できるのです。

 ただし一般論として、自動梱包では細かい荷姿の設定に手間取るケースが完全には払拭されていません。それをいかに柔軟に対応できるかに向けては、さらなるイノベーションが期待されるのかもしれません。

鈴木 邦成(すずき・くにのり)

日本大学教授、物流エコノミスト。博士(工学)(日本大学)。早稲田大学大学院修士課程修了。日本ロジスティクスシステム学会理事、日本SCM協会専務理事、日本物流不動産学研究所アカデミックチェア。ユーピーアールの社外監査役も務める。専門は、物流・ロジスティクス工学。主な著書に『物流DXネットワーク』(中村康久との共著、NTT出版)『トコトンやさしい物流の本』『シン・物流革命』(中村康久との共著、幻冬舎)などがある。

中村康久(なかむら・やすひさ)

ユーピーアール株式会社技術顧問。工学博士(東京大学)。NTT電気通信研究所、NTTドコモブラジル、ドコモUSA、NTTドコモを経て現職。麻布高校卒業後、東京大学工学部計数工学科卒業。元東京農工大学大学院客員教授、放送大学講師。主な著書に『Wireless Data Services-Technology, Business model and Global market』(ケンブリッジ大学出版)、『スマートサプライチェーンの設計と構築』(鈴木邦成との共著、白桃書房)、『シン・物流革命』(鈴木邦成との共著、幻冬舎)などがある。