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工場間輸送への「通い箱」利用の効果をトレーサビリティが高める【第18回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年9月19日

通い箱の未返却・紛失をRFID使った個品管理で防ぐ

 通い箱の未返却・紛失対策として期待されるのが、RFID(ICタグ)を使った通い箱の個品管理です。全ての通い箱にID情報タグを付け、出荷時に庫内に設置したリーダーで読み取ります。納品先にもリーダーを設置し入荷履歴を把握します。

 上述した部品メーカーA社の場合、個品管理システムを導入した結果、通い箱の回収率を格段に高められました。通い箱の回収にかかる時間も短縮でき、それまで2週間以上かかっていた回収リードタイムが3日〜7日程度と、半分以下に改善されました。

 昨今の通い箱の個品管理では、通い箱1つひとつの出荷状況や出荷・返却履歴、使用頻度、現状などをクラウド上でリアルタイムに管理できます(図2)。RFIDを活用したトレーサビリティ(追跡可能性)を実現し、内容物の在庫や回収についてもWeb上の管理できるサービスもあります。

図2:通い箱のクラウド管理による高度化の例

回収後の洗浄プロセスの自動化・履歴管理も可能に

 通い箱は、ワンウェイで使っている段ボール箱の梱包・開梱の手間や廃棄コストを削減できます。ただ、その回収に時間がかかったり、紛失が頻繁に発生したりすることも多く、それが導入に向けた大きなネックでした。それが近年、RFIDの装着で、位置情報や出荷履歴などを管理できるようになりました。デジタル化で通い箱はシン・物流のための戦略ツールの1つに格上げされたわけです。

 さらに最近は、通い箱を回収した後の洗浄プロセスにおいても、完全自動化や洗浄履歴のクラウド管理の道筋が整いつつあります。そうした通い箱が今後、近未来の物流を担う無人物流センターや一連のロボット荷役を側面から支援する役割を担うのは間違いありません。

鈴木 邦成(すずき・くにのり)

日本大学教授、物流エコノミスト。博士(工学)(日本大学)。早稲田大学大学院修士課程修了。日本ロジスティクスシステム学会理事、日本SCM協会専務理事、日本物流不動産学研究所アカデミックチェア。ユーピーアールの社外監査役も務める。専門は、物流・ロジスティクス工学。主な著書に『物流DXネットワーク』(中村康久との共著、NTT出版)『トコトンやさしい物流の本』『シン・物流革命』(中村康久との共著、幻冬舎)などがある。

中村康久(なかむら・やすひさ)

ユーピーアール株式会社技術顧問。工学博士(東京大学)。NTT電気通信研究所、NTTドコモブラジル、ドコモUSA、NTTドコモを経て現職。麻布高校卒業後、東京大学工学部計数工学科卒業。元東京農工大学大学院客員教授、放送大学講師。主な著書に『Wireless Data Services-Technology, Business model and Global market』(ケンブリッジ大学出版)、『スマートサプライチェーンの設計と構築』(鈴木邦成との共著、白桃書房)、『シン・物流革命』(鈴木邦成との共著、幻冬舎)などがある。