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  • 製造DXの“今とこれから” 「Industrial Transformation Day 2024」より

システム連携とAMR(自動走行搬送ロボット)で工場内の情報とモノの流れをつなぐ

「Industrial Transformation Day 2024」より、中国ファーレイテクノロジーの李 舒矛 氏

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2024年5月10日

在庫の最新状態が分かれば柔軟な生産計画が可能に

 スマート化で生産体制が分散型になると、「オーダー件数は増える一方で、オーダー当たり生産する製品数は減る傾向がある」(李氏)。となれば「在庫を頻繁に確認する必要があるが都度、人手で確認するのは困難」(同)だ。

 だがAPSを導入したことで、WMSやMESのデータにリアルタイムにアクセスでき、「原料の過不足だけでなく、輸送中の原料がいつ届くのかも把握でき、必要な部品が揃っている製品から着手するといった生産計画を立てられるようになる」(李氏)。従来なら「途中で部品が不足して生産が止まり、生産ラインの横に仕掛品が積み上げられていた」(同)という。

 こうした仕組みを、滞りなく機能させるためにも「ARMが必要だ」と李氏は強調する。「人手を介したモノの動きが残れば、部品を届けるのが遅れたり、届間違いが起こったりする」(同)からだ。

 実際、X社の場合、工業団地内に製造拠点と物流センターを隣接して設けており、両者間でのモノの流れがあった。現在はAMRを、製造拠点に500台、物流センターには200台を導入し、原料の入庫から完成品の出庫までを「ほとんど人手を介さずに自動化している」(李氏)という。

 原料が到着すると人が荷下ろしすれば、画像認識により入庫が完了する。原料の形状により、高層ラックに収めたりケースに入れたりする。受注オーダーが入れば指図書に基づき自動で出庫され、人手でピッキングし終わると、AMRが指示書に沿って部品を仕分けし、牽引型AMRが必要な地点に届ける。必要な部品もAMRが指定のラインに搬送し投入する。

 完成品もAMRが製品倉庫に届け保管する。出庫時は、パレット単位やカートン単位などの別に梱包・ラベリングまでが自動で完了する。

場面や対象によってAMRを使い分ける

 ここでのAMRの動きは、大きく4つのプロセスに分けられる。それぞれに最適なARMが選ばれている(図3)。

図3:用途や対象に合わせて種々のAMRから選択する必要がある

プロセス1=原材料の受入と保管、仕分け :X社が扱う原料は、抵抗器やコンデンサ、チップなど非常に小さい電子部品が多い。これら電子部品のSKU(最小管理単位)は多種大量になる。抵抗器一つをみても抵抗値の値が異なる物が多々あるからだ。

 それを正確にピッキングする必要があるが「人手では非常に大変」(李氏)だ。X社では、棚の移動が可能なAMRと商品タグを高速スキャンする自動ゲートを組み合わせて自動化している。

 構造部品の搬送・保管には、積み上げが可能なフォーク型AMRやリーチ式AMR、搬送用AMRを組み合わせている。積み上げ可能なAMRは構造部品の保管を、搬送用AMRは場所への輸送を、それぞれ担当する。ただし、それなりのコストが掛かるため、「効果的に組み合わせることが重要だ」と李氏氏は指摘する。

 仕分けが必要な構造部品は、「種類別に容器に入れると場所を取って困るケースが多い」(李氏)。そのため「生産時に使う単位ごとに他の部品を合わせてラックに保管することで場所を節約できる。それをラックごと運べば効率も高まる」(同)という。

 電子部品は牽引型AMRを使って、必要な場所に正確かつ速やかに運ぶ。生産ラインでは、昇降可能なローラーコンベア型AMRを活用する。「ローラー部分が昇降するため、下段に空のケース、上段に原料の入ったケースを置けば、人手による作業負荷を削減できる」(李氏)とする。

プロセス2=ラインへの投入 :投入方法は、パレット単位、台車、車輪付きの棚、静電気防止ケースなど特定の容器など4種類がある。生産ラインでは担当者が分類し、指図書に基づき工程ごとに分けた後、ローラーコンベア型AMRでラインに投入する。リチウム電池など重量もある部品はパレットままラインに投入する。高低差があればフォーク型AMR、高さへの対応が不要ならリーチ式AMRを活用する。

プロセス3=完成品のラインオフ :完成品を倉庫に運ぶ際は、コンベアがない時はパレット単位で、コンベアがあればカートン単位に運ぶ。

プロセス4=保管と発送 :フォーク型AMRを活用する。ラックへの搬入は積み上げ型AMRと搬送型AMRを組み合わせる。ここから、BtoB(企業間)向け製品はパレット単位で搬出し、BtoC(企業対個人)向け製品は必要なものをピッキングして届ける。

AMRは種々の産業で自動化・無人化を実現

 李氏は、「当社のAMRは、X社のようなPCや携帯電話、家電製品などの製造業だけでなく、リチウム電池産業や太陽光などの新エネルギー産業などでも導入されている。リチウム電池産業では全フローの搬送の自動化が、ソーラーセルの組み立て工場では無人化が、それぞれ実現されている」と話す。

 ほかにも、紡績や食肉加工、自動車・自動車部品といった産業や、「ディスプレイのように人手による作業を減らしたほうが良い分野と、エレべーターなどサイズが大きく人手で運ぶのが困難な分野などで活用が進んでいる」(同)という。

 李氏は、「AMRは、さまざまな分野で利用でき、さまざまな業界におけるモノの流れをつなぐ役割を果たしている。生産をよりスマートにし、各社の効率を高めているという事業理念を推進していきたい」と力を込めた。