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  • 現場から経営へ、企業の持続的成長を支えるSCMの今

サプライチェーンを取り巻く環境は複雑化する一方、データドリブンなSCMの実現が経営を支える

齋藤 公二
2024年10月2日

 SCMは、計画系と呼ばれる「SCP(Supply Chain Planning)」と、実行系と呼ばれる「SCE(Supply Chain Execution)」からなる。SCPは、予算計画や需要予測、販売計画、在庫計画、補充計画、生産計画などを担う。SCEは、SCPが立てた計画を元に、受注管理、販売管理、納期管理、在庫管理、補充依頼、生産依頼などを実行する。

 データドリブンなアプローチはSCMの計画系への適用が1つのポイントになる。計画系は、実行系よりもデータ分析の結果を直接的に生かしやすく、継続的な改善につなげやすいという特性があるからだ。需要予測や販売計画といったSCPにおけるデータ分析から取り組みを始め、各プロセスが取り扱うデータを統合的に管理しながら、受注管理や在庫管理といったSCEのデータ分析へと活動を広げていく。

 もちろん、IoTデータやセンサーデータなどを活用し、実行系から取り組みを始めることもできる。実際、店頭在庫や顧客の回遊行動を分析して受発注プロセスにフィードバックしたり、物流トラックの移動量を分析してルートを最適化したりする事例も増えている。

複数の団体がSCMの標準化を推進している

 SCM自体は、長い歴史を持っている。最初に提唱されたのは1980年代の米国で、2000年代には製造業、食品業、アパレル、ITなど世界中のさまざまな業界で本格的に採用されるようになった。

 現在は、複数の団体がSCMの標準化を推進している。最も代表的な活動は、米国の専門家団体であるASCM(Association for Supply Chain Management)によるもので、SCM標準の「APICS」と、それに沿った認定資格「CPIM」を提供する。ASCMの構成組織である米SCC(Supply Chain Council)は、サプライチェーンプロセスの参照モデル「SCOR」を開発している。

 ASCMはSCMを次のように定義している。

「価値の創造、競争力のある基盤構築、世界規模でのロジスティクス活用、需供の同期化、グローバルなパフォーマンス測定を目的とする、サプライチェーン活動の設計、計画、実行、管理、監視」(https://www.ascm.org/topics/supply-chain-management/

 SCMが対象とする領域は、原材料や部品の調達から、設計・製造、物流・流通、販売・消費までの一連のプロセスだ。具体的な業務内容としては、生産計画、需要予測、調達管理、生産管理、在庫管理、受発注・返品管理、物流管理、品質管理、リスク管理などが含まれる。

 これらSCMの一連のプロセスには、サプライヤーや、メーカー、卸売業者、物流業者、小売業者など多くの関係者が関わっている。それだけに、サプライチェーン全体の最適化を図るためには、関係者間で統合的に管理する必要がある。個々の企業が個別に取り組む限りでは個別最適に留まりやすいと言える。

 近年は、ビジネスのデジタル化が進んでいる。そのためSCMの考え方を製品の“モノ売り”だけでなく、ソフトウェアやサービスの提供といった“コト売り”のビジネスモデルにも適用する動きが進んでいる。デジタル化やグローバル化が進めば進むほど、業界の垣根を超えて、さまざまな企業が連携する“共創型”で取り組む必要性が高まっていく。