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- AI協働時代の技能継承のカタチ〜技と知を未来につなぐために〜
デザイン業務におけるディレクターの技能継承とAI活用【第6回】
技能継承は、個人の技から組織の知へ
AI技術がディレクターの技能を部分的にサポートできるようになった今、技能継承は「個人の熟練技を伝える」段階から「組織として知を共有し、発展させる」段階へと進化している。
これまで属人的に蓄積されてきたベテランの勘や感性は、AIの解析力と記録力により言語化・体系化され、組織の資産として活用可能な知へと変わりつつある。つまり、技能の継承先は“人”から“システム”へ、そして“組織”そのものへと広がっている。
AI技術は熟練者の代わりを務める存在ではなく、経験の背後にある判断構造を可視化し、誰もが同じ視点で考えられる「共有知化の装置」として機能する。これにより、個人の経験や感覚に依存していた品質の判断基準や勘どころが、チーム全体で共有される意思決定や育成の基盤として再構築されつつある。品質の担保はもはや属人的な責任ではなく、組織全体で継承・改善していく仕組みへと進化しているのだ。
AI協働時代の技能継承とは、単に“人の仕事を置き換えること”ではなく、組織全体の知を高め、再現性と持続性のある品質管理体制を築くことにこそ意義がある。AI技術によって個人の経験や判断が可視化・共有され、クリエイティブや品質管理の水準が向上する一方、最終的な判断や企画意図の統合、ブランド価値の向上といった本質的なディレクションは依然として人間の役割である。
人とAI技術が互いの強みを活かしながら学び合うことで、技能継承は絶えず発展し、組織の競争力を高める原動力になる。AIと人が協働する新たな技能継承のあり方を再定義し、現場から組織全体へと広げていくべきである。
西岡 千尋(にしおか・ちひろ)
アビームコンサルティング 執行役員・プリンシパル AI Leapセクター長。コンサルティングファームのマネジングディレクター、チャットボット開発企業のCDO(最高デジタル責任者)を経て、アビームコンサルティングに入社。テクノロジーとイノベーションによる社会貢献を進めるとともに、クライアント企業のDXやデータドリブン経営の実現を支援する。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修士。
濱口 菜々(はまぐち・なな)
アビームコンサルティング AI Leapセクター マネージャー。大手通信会社の研究所、デザインコンサルティング部門を経て、アビームコンサルティングに入社。人間中心設計(HCD)に基づき、AIをはじめとするデジタルテクノロジーに関連して、戦略策定からアプリケーションデザイン・評価まで一貫して支援。HCD-Net認定資格 人間中心設計専門家。大阪大学大学院基礎工学研究科修士。