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そもそもデータ駆動は仕事にどう役立つのか:方向付け編【第19回】

データの重要性がいまひとつ腑に落ちないあなたへ

磯村 哲(DXストラテジスト)
2026年4月10日

 方向付けがなされれば、その方策を具体案に落とし込むステップが始まります。それが“具体化(creation)です(図1)。一般に具体化は人間の創造性に依存していますが、明確な方向性が示されていれば、コンピューターが、そのステップの一部または全てを代替できることがあります。技術的には「最適化」あるいは「逆推定」と呼ばれます。

図1:意思決定における一般的な流れ

 この具体化のステップにおいて計算機が人間を完全に代替できることは稀ですが、単純な系ではあり得るでしょう。特に最近は、文章生成やプログラミング、画像処理などの領域では生成AI(人工知能)技術が驚くほどの速度で進歩しています。現在の技術でも、ある程度の方向付けがなされれば、AIエージェント自らが状況を想定し具体化したプロンプトを生み出せますし、それに沿った作業ができます。

 さらに評価を担当する別のAIエージェントを配置すれば、人間は方向付けと意思決定に専念できるようになるでしょうし、それすら関与のレベルを引き下げていくことになるかもしれません。

データサイエンスはインターネット革命の産物

 前回と今回の議論で「業務におけるデータ駆動とは何か」について多少なりとも納得いただけたでしょうか。違和感の正体や取るべき態度は腑に落ちたでしょうか。前回と今回の議論による一応の結論は以下です。

データ利用は(1)意思決定に資する“評価”と(2)方向付けに資する“発見”の2つの側面を通じて、あらゆる階層の業務に貢献しうる

データサイエンスは実践的に用いるべきであり、真理を含んでいないことに留意すべきである

データの利用価値がそれほど高くないときには、既存の手続きに従って人間を支援する形で利用されるべきである。精度や速度が人間の知性を含めた他の手法を凌駕するとき、データは意思決定や方向付けを駆動するようになるだろう

 近年のデータサイエンスは、インターネットによってビッグデータが流通するようになり、そこから価値を見出そうと発展した技術、つまりはインターネット革命の産物です。

 従ってインターネット上の、さまざまに革新的なカルチャーと一体不可分に結び付いています。その一方で、本質的には古くから使われてきた統計が発展し、使いやすく改良されたという側面も有します。

 つまり、データ解析に関する長年の研究の積み重ねがインターネット、ビッグデータと出会い、転換点を超えて、さまざまな問題に使われ、その結果として知的活動に広く影響をもたらし始めた。これがデータ駆動に至った流れなのではないでしょうか。

磯村 哲(いそむら・てつ)

DXストラテジスト。大手化学企業の研究、新規事業を経て、2017年から本格的にDXに着手。その後は中堅製薬企業等でDXに従事し、現在は準大手ゼネコン企業のDX・IT責任者を務める。専門はDX戦略、データサイエンス/AI、デジタルビジネスモデル、デジタル人材育成。個人的な関心はDXの形式知化であり、『DXの教養』(インプレス、共著)や『機械学習プロジェクトキャンバス』(主著者)、『DXスキルツリー』(同)がある。DX戦略アカデミー代表。