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- 課題解決のためのデータ活用の始め方
データ活用に向けた収集データの優先順位と成功へのステップ【第3回】

前回は、データ活用によって得られる具体的な価値について、ターゲティングやダイナミックプライシングの事例を挙げて、説明しました。「データ活用に取り組みたい」と思われると同時に「何から始めればよいのか」「どのような順序で進めればよいのか」といった疑問も生じたのではないでしょうか。今回は、データ活用を進めるための基本的なステップと、そこでのアプローチ方法について解説します。
データ活用により“KKD(経験・勘・度胸)”から脱却し、データに基づく客観的な判断に基づいて業務の標準化や効率化を図れれば、安定した事業運営が可能になります。その実現に向けては、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか。
データ活用の最初のステップは「貯める」
データ活用に向けて企業が踏むべき最初のステップは、データを「貯める」ことです。データを見る時には、過去と現在、エリアごと、事業ごとなどの比較が必要になります。一時点、一部、単体のデータだけでは比較できないだけに、目的に合わせてデータを蓄積していく必要があります。
ここで重要なのは「顧客のデータや行動データは過去に遡っては集められない」ということです。計画を決めてからデータを貯めようとすれば、計画を立てている間、データを取得するチャンスを失ってしまいます。属性や行動といった時系列で変化するデータは、とにかく集められるだけ集めておく必要があります。
近年はデータを蓄積するストレージの単価が非常に安価になってきているため「整理されていないデータでも、とりあえず貯めておこう」という考え方が強まっています。まずは手元に、どのようなデータがあるかを確認し、データをなるべく多く集めることから始めましょう。
「データを集める」と決めたら、集めるべきデータの優先順位を明確にします。リアル店舗とEC(Electrice Commerce:電子商取引)サイトの両方を展開している流通業者を例に挙げれば、集めるデータの優先順位は次の3つに大別できます(図1)。
(1)不可欠なデータ=今すぐ集める
- 顧客の基本情報(属性、連絡先、会員登録情報)
- 売り上げ・取引データ(購買履歴、注文明細、決済情報)
- 商品/サービスのマスターデータ(在庫、価格、カテゴリー)
これらは基本的に基幹システムに存在するデータです。
(2)重要データ=早期に集める
- Web行動データ(ページビュー、滞在時間、離脱率、検索キーワード)
- マーケティングデータ(キャンペーン反応、メール開封率、広告効果)
- カスタマーサポートデータ(問い合わせ内容、対応履歴、満足度)
これらは新たに収集のための仕組みが必要になりますが、価値の高いデータ群です。
(3)将来活用するデータ=余裕があれば集める
- 外部データ(SNSでの言及、競合情報、市場トレンド)
- 非構造化データ(商品レビューのテキスト、画像、動画)
- IoT(Internet of Things:モノのインターネット)/センサーデータ(店舗の人流、設備稼働状況)
これらは高度な分析に使用するための発展的なデータ群です。
アプローチとしては、まずは購買データと商品マスターから始め、次にWeb行動データでカート放棄の分析を追加し、最終的にはレビューテキストの感情分析まで広げていくといった段階的アプローチが効果的です。
