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- 金融業界におけるAI時代の技術実装の道筋
JPX総研、市場取引の活性化に向けた生成AIサービスを開発し提供
「Fintech Business Informatics 2026」より、JPX総研 フロンティア戦略部 主任 三村 優里香 氏
金融市場のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、膨大な開示情報をいかに活用し投資を判断するかは大きな課題である。JPX総研 フロンティア戦略部 主任の三村 優里香 氏が「Fintech Business Informatics 2026」(主催:本プログラム委員会、共催:インプレス、2026年1月20日)に登壇し、増え続ける適時開示情報を活用するために開発した生成AI(人工知能)サービスについて説明した。
「情報量の増加と人間による処理の限界を感じている。投資家が投資先や投資商品を判断するに当たって利用する情報は、その種類・量ともに増え続けている」--。JPX総研 フロンティア戦略部 主任の三村 優里香 氏は、膨大な適時開示情報について、こう話す(写真1)。
適時開示の資料数は2024年に15万件を超え100万ページ超に
JPX総研は2022年4月、JPXグループ(日本取引所グループ)の戦略的な事業展開に向けた中心会社として設立された。中期経営計画では「デジタルイノベーションを共創する」を重点テーマに掲げ、グループ各社に分散していたデータとデジタル事業を集約するとともに、AI(人工知能)技術などの先端技術導入と業界課題解決を先導している。
同社は、上場企業に関するあらゆる情報を集約・配信する立場にある。リアルタイムの相場情報から決算短信、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)情報といったデータを扱っている。三村氏自身は、2019年の入社以来、上場会社や証券会社向けのシステム開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に携わり、フロンティア戦略部では新規サービス企画を担当している。
投資判断に利用できる情報は、かつては株価や財務諸表などの構造化データが中心だった。それが現在では「IR(Investor Relations)資料や決算説明会の音声などの非構造化データ、衛星画像やPOS(販売時点管理)データなどのオルタナティブデータにまで対象の幅が広がっている」と三村氏は話す。
しかし冒頭で三村氏が指摘したように、データ量の増加は新たな問題を引き起こしている。上場会社が東京証券取引所(東証)の適時開示情報伝達システム「TDnet(Timely Disclosure network)」経由で開示した資料数は2024年に15万件を超え、100万ページを上回った(図1)。
こうした現状を三村氏は「多くの銘柄がある中で、アナリストの数は限られ、翻訳リソースにも制約がある。処理にかけられる時間は短く、情報量には波があり、開示が集中する時期もある。情報ソースも分散している。生産年齢人口の減少もあり、人間の処理能力はこれ以上伸びない」とみる。
結果「全てを調べ切れないため、情報にアクセスしやすく、既に知られる有名銘柄に投資が集中してしまう」と三村氏は指摘する。少数の銘柄に資金や関心、売買が集中し、流動性が偏在する状況は「日本市場の魅力低下に直結する」(同)ことになる。
現在、東証には約4000社が上場している。だが三村氏は「その多くが十分に注目を集められていない」と指摘する。同時に「この課題を別の角度から捉えれば『調べられないから投資されない』という流れを逆回転できれば全社に光が当てられる」(同)ともいう。そのためのブレークスルーとしてJPX総研が着目したのが生成AI技術の活用である。
投資情報へのアクセスを高める生成AIサービスを開発し提供
JPX総研が開発した生成AIサービスとして、三村氏は次の3つを挙げる。いずれも無料で提供し「情報へのアクセス障壁を下げ、より多くの投資家や関係者が上場企業の情報に触れられる環境を整えたかった」(三村氏)とする。


