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  • 金融業界におけるAI時代の技術実装の道筋

AI・データ活用の成果は組織設計や標準化の有無が左右する

「Fintech Business Informatics 2026」でのFDUA企画パネルディスカッションより

阿部 欽一
2026年4月7日

パネルディスカッション:データ活用を前進させる実践ポイントは何か

 続くパネルディスカッションでは、パネリストにEYストラテジー・アンド・コンサルティングの門脇 直人 氏、Lupinusの小出 和輝 氏、三井住友カードの白石 寛樹 氏、セブン銀行の水村 友香理 氏が登壇。モデレーターをFDUA標準化委員長代行でNEC デジタルファイナンス統括部 ビジネスプロデューサーの日野 大介 氏が務めた。

日野 大介 氏(以下、日野) :『金融データ活用組織ベストプラクティス』のアドバイザーを務められた門脇氏と小出氏に伺います。データ活用を進める上で特に重要だと感じているポイントは何でしょうか。

写真2:FDUA標準化委員長代行でNEC デジタルファイナンス統括部 ビジネスプロデューサーの日野 大介 氏

門脇 直人 氏(以下、門脇) :EYストラテジー・アンド・コンサルティング 金融サービスコンサルティング デジタルリスク ディレクターの門脇 直人です。重要なのは、データ活用を“仕組み”として設計することです。個別の成功事例を積み上げるだけではなく、再現性のある体制やガバナンスを整備しなければ、組織としてのレベルアップにはつながりません。

写真3:EYストラテジー・アンド・コンサルティング 金融サービスコンサルティング デジタルリスク ディレクターの門脇 直人 氏

 チェックシートでも示された通り、ガバナンスの成熟度が成果に相関しています。ルールや責任分担を明確にすることが挑戦を後押しする基盤になります。

小出 和輝 氏(以下、小出) :Lupinus コンサルティング事業本部 Principalの小出 和輝です。私も同様に、再現性と標準化が鍵だと考えています。データ活用が特定の部署や個人に依存している状態では、持続的な成果は生まれません。ベストプラクティスを言語化し、横展開していくのは難しい取り組みです。ですが個人的には、費用対効果の高い領域からのスモールスタートで始め、拡張していくアプローチが有効だと思います。

写真4:Lupinus コンサルティング事業本部 Principalの小出 和輝 氏

現場には技術以上にコミュニケーションの難しさがある

日野 :実際に現場で苦労されたポイントは何でしょうか。

白石 寛樹 氏(以下、白石) :三井住友カード 執行役員/データ開発本部長の白石 寛樹です。最も難しいのは、チームでプロジェクトを進めることです。データ人材といっても役割はさまざまで、ビジネス側の担当者、データサイエンティスト、データエンジニアなど専門性が異なります。同じ「データ活用」という言葉を使っていても、見ているものが違うことがあります。

写真5:三井住友カード 執行役員/データ開発本部長の白石 寛樹 氏

 例えば、データの定義や異常値処理などの前処理はエンジニア側の専門領域です。一方で、ビジネス部門は「この分析で何を明らかにしたいのか」を考えます。その間をどうつなぐかが非常に重要です。結局のところ、人間同士が対話しながら1つの目的を達成していく共同作業です。

 現場には、技術の話以上に、コミュニケーションの難しさがあります。プロジェクトの目的を共有し、互いの専門性を理解し合うことができなければ、成果にはつながりません。この辺りが実は最も重要だと感じています。