- Column
- 金融業界におけるAI時代の技術実装の道筋
AI・データ活用の成果は組織設計や標準化の有無が左右する
「Fintech Business Informatics 2026」でのFDUA企画パネルディスカッションより
日野 :ビジネス効果を出すには、どのような工夫をされていますか。
水村 友香理 氏(以下、水村) :セブン銀行 AI・データ戦略部 データサイエンスグループ 調査役の水村 友香理です。大きく3つの課題があると考えて取り組んでいます。1つは目的の明確化です。分析が目的化してしまうと、成果は出ません。最初に「何を解決したいのか」「どのKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)にインパクトを与えたいのか」を明確にすることを徹底しています。
2つ目は業務部門との連携です。分析結果をレポートで終わらせず、業務プロセスに組み込むことが重要です。施策実行まで伴走し、効果を検証するところまで責任を持つ体制を整えています。
最後は成果の可視化と共有です。小さな成功でも社内に共有することで、理解が広がり、次のプロジェクトにつながります。データ活用を特別な活動にせず、日常業務の一部にしていくことが最終的なビジネス効果につながると考えます。
生成AI時代にはガバナンスや業務設計がより重要に
日野 :生成AI技術の活用が進む中で、今後の論点と対応については、どのようにお考えでしょうか。
門脇 :生成AIは非常に強力なツールですが、その活用には、これまで以上にガバナンスが重要になります。特に説明責任やログ管理、利用範囲の明確化といった観点は欠かせません。生成AIを活用することで意思決定のスピードは上がりますが、そのプロセスを後から検証できる状態にしておくことが必要です。リスクを恐れて止めるのではなく、管理可能な形に整えることが重要だと考えています。
小出 :技術的なハードルは確実に下がっています。一方で、AIエージェントの登場で、データ整備の重要性は、さらに高まっています。非構造化データを組み合わせて分析するケースも増えていくだけに、単にツールを導入するだけではなく、業務設計そのものを見直す必要があります。どの工程をAIに任せ、どの判断を人が担うのかを明確にすることが、持続的な活用につながります。
水村 :現場の視点では、生成AIを含め、新しいツールやサービスが次々と登場しています。そこで重要なのが内製化の取り組みです。内製化により変化への対応力を高めることで、新しい技術が出てきても柔軟に対応できます。生成AIは進化のスピードが非常に速い分野です。その変化に振り回されるのではなく、自分たちで取捨選択し、業務にフィットさせていく力が今後ますます重要になると考えています。
白石 :こうした議論を通じて改めて感じるのは、AIや生成AIの活用は、技術の問題ではなく、組織の問題だということです。データ基盤やツールは整いつつありますが、それをどう使いこなすかは組織設計と人材育成にかかっています。個社で完結するテーマでもないとも感じています。標準化や共通言語の整備といった非競争領域では、業界横断での協調が重要です。互いの知見を共有しながら底上げを図ることで、金融業界全体の競争力が高まります。
生成AIの可能性は大きいですが、目的は技術を使うことではなく、ビジネス価値を創出することです。その視点を忘れずに、地道に取り組みを積み重ねていくことが、真のレベルアップにつながると考えています。

