- Column
- 匠の技とAI技術が融合する“人間中心”の製造DX
コスモ石油、製油所デジタルツインを基盤にAI予兆保全で稼働率を高める
「Industrial Transformation Day 2026」より、工務部 保全戦略グループ長の吉井 清英 氏
RCoEが担う予兆保全が事故を未然に防止する
2024年5月からは、構築したデータ統合基盤を社内に開放し、図面検索やアプリケーションを使う長期トレンド予測を保全・製造部門で開始している。同年11月には、千葉製油所内に保全専用の統合モニタリングルームを開設し、2025年1月には「3つの製油所の状態監視データを1カ所に集約し、9面パネルとAI分析による予兆保全を開始」(吉井氏)した(図2)。
3製油所の状態監視を担う部門を、同社は「RCoE(Reliability Center of Excellence)」と呼ぶ。モニタリングルームではデータ統合基盤上に構築したIoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサー専用画面を監視する。予兆保全の制度を高めることで、稼働率の向上につなげている」(吉井氏)とする。
RCoEによる成功事例の1つに、原油タンクの予兆保全で事故を未然に防いだ例がある。製油所には直径約90メートルの原油タンクが複数基設置されている。人の点検には時間的制約があるため「24時間監視が難しかった」(吉井氏)現場だ。
そこで、タンクミキサーにIoTセンサーを取り付け、異常が生じた際はしきい値超過アラートとして検出できるようにした(図3)。「あるとき、センサーの振動幅が他の2倍以上大きいことを検知した。手持ちの振動計を測定した結果、分解点検が必要と分かり、リスクを回避できた」と吉井氏は説明する。
ほかにも現場で、デジタルプラットフォームとAI技術との組み合わせでは「3D(3次元)データの解析やセグメント化、生成AI(人工知能)技術による情報の検索・回答や要約など」(吉井氏)を実現している。
具体的には、3D(3次元)データを設備の種類ごとにセグメント化し、バルブなど特定の設備だけをフィルターをかけて表示する。現場ではタブレットから図面の情報を参照し、生成AI技術を使った自然言語の質問で特定の項目についての回答を得る。ほかにも、蓄積した不具合データから該当する情報を抽出し、グラフとして表示する用途にも生かしている。
5つの機能・組織が一体となる連携が重要
デジタルサービスの導入やDXに取り組むうえでポイントになる要素として(1)経営、(2)IT部門、(3)現場、(4)PMO(Project Management Owner)、(5)バートナー、の5つを挙げる。
経営は、ビジョンの共有と変革へのコミットメントを握る存在だ。IT部門は、現場とPMOだけでは不足するITの専門知識を補い、データの専門家として現場を支援する役割を果たす。現場はニーズやユースケースの起点となる。それが伴わなければ「どれほど優れたサービスしても効果を刈り取るまで至らない」(吉井氏)
PMOは「事務局として現場と経営をしっかりつなぎ、イネーブラー(推進役)としてプロジェクトをマネジメントする」(吉井氏)役割だ。パートナーは社内にないスキルやサービスを補う存在であり「どのパートナーと組むかが成功のカギを握る」(同)
講演の最後に吉井氏は「これら5つの機能・組織が一体となってこそ、主役である現場の変革が実現する」と力を込める。

