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- “正論“では動かない!人が動きたくなるゲーミフィケーションの基礎と実践
ゲーミフィケーション導入の“向き・不向き”の境界線【第2回】

前回は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進における最大の壁が「現場の巻き込みと継続」にあることと、その解決策として人間の“感情(情緒的価値)”を動かすゲームの知見が有効だとお話ししました。今回は、ゲーミフィケーションの正しい定義と世界的な市場トレンドを整理した上で、ビジネスに導入する際に絶対に外せない“得意領域”と“不得意領域”について解説します。
第1回を読み「なるほど、ゲームの考え方が必要なのは分かった。でも、具体的にゲーミフィケーションって何をすることなんだろう? 単に仕事の中にポイントやランキングを取り入れれば良いのだろうか?」--。そんな疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。実は、ここに多くの企業が陥る“最大の罠”が潜んでいます。
その理由を説明する前にまず、言葉の定義を明確にしておきましょう。ゲーミフィケーション(Gamification)は一般に次のように定義されます。
「ゲームのメカニズムやゲームデザインの要素を非ゲームの分野に応用すること」
ここで重要なのは「ゲームそのものを作るわけではない」という点です。業務時間中に社員にスマートフォンでゲームをさせるわけでも、全ての業務をRPG(Roll Playing Game)仕立てにするわけでもありません。あくまでもゲームの裏側にある「人がつい夢中になってしまう設計図(メカニズムや心理学)」を、日常の業務やシステムに置き換えることを意味します。
しかし、この概念を導入する際に最も誤解されがちなのが“PBLの罠”です。PBLとは「Points(ポイント)、Badges(バッジ・称号)、Leaderboards(リーダーボード/ランキング)」の3つを指します。
例えば「システムへの入力を頑張ったら10ポイントあげよう」「一定数クリアしたら『マスター』のバッジを付与しよう」「今週の入力数ランキングを画面に表示しよう」などがPBLです。ただ、いずれもがゲームの表面的なコンポーネント(要素)に過ぎません。
こうしたPBLを既存の業務にただパッチワークのように貼り付ける“形だけのゲーム化”は非常に危険です。その表面的な仕組みは、最初の1〜2週間は好奇心や興味で人が動くかもしれませんが、すぐに飽きられます。それどころか「子ども騙しだ」「ランキングで監視されているようで不快だ」と現場のモチベーションをかえって低下させる原因にもなり得ます。
ゲーミフィケーションの本質は、PBLという部品を並べることではなく、利用者が、その業務を通じて「自分で選んでいる感覚」「成長している感覚」「仲間とつながっている感覚」を感じられるような体験の仕組み、つまり体験のエコシステムそのものをデザインすることなのです。
BtoCからBtoB領域への投資が世界中で加速
ゲーミフィケーションを単なる一過性のトレンドや、一部のITベンチャーの取り組みだと思ったら大間違いです。現在、ゲーミフィケーションの市場規模はグローバルで急拡大しています。
数年前までは、ゲーミフィケーションの適用先は主に、フィットネスアプリ(歩数に応じてキャラクターが育つなど)や、語学学習アプリといったBtoC(企業対個人)の領域が中心でした。しかし現在、最も急速に浸透しているのはBtoB(企業間)のビジネス現場です。
BtoB領域で市場が拡大している背景には、3つのメガトレンドがあります。
トレンド1:SaaS導入の爆発的増加とチャーン(解約)防止の必要性
多くの企業が業務のあらゆる場面でSaaS(Software as a Service)を導入するようになりました。SaaSベンダーにすれば、利用者に使わなくなり解約されてしまっては事業が成立しません。そのため、サービスの中に自然と使い続けたくなる仕組みを組み込むことが重要視されています。その手法の1つとしてゲーミフィケーションが注目されています。
トレンド2:ミレニアル世代・Z世代の台頭
現在のビジネス現場の主軸になりつつある若い世代は、生まれた時から高度にデザインされたデジタルゲームに親しんできた「ゲームネイティブ」です。彼らは、直感的ではなく、フィードバックが遅く、ワクワクしない社内業務システムに対しては、上の世代以上に強いストレスと拒絶反応を示します。
トレンド3:リモートワークの定着による「見えないモチベーション」の課題
オフィスに出社していれば、職場での互いの頑張りが自然と見え、声の掛け合いもありました。ただ、リモートワークが普及した結果、個々の社員の業務がブラックボックス化し、孤独感やモチベーションの低下を招きやすくなっています。これをリモート環境における心理的報酬や可視化によって解決するための手段としてゲームの知見が求められています。