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ジェネレーティブデザインが設計時の素材選定や工場建設までを変えていく

米Autodesk COOのスティーブ・ブラム氏とCCOのエリザベス・ゾーンズ氏

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2023年11月13日

ゾーンズ :支援チームでは、建物や構造に含まれる炭素の体積を評価する仕組みも開発している。建築家や開発者が、設計中の構造物に炭素がどれだけ含まれているかを予測するものだ。ジェネレーティブデザインと併用すれば、炭素のパラメーターを改善するための選択肢を検討できる。環境に配慮したデザイン・設計では、材料そのものの見直しも重要になってくる。

 トヨタ自動車では、より収益性が高く、より軽量なシートの設計に取り組んでいる。生成AIとジェネレーティブデザインを組み合わせて、従来の設計手法と比較して数分の1の材料しか使わない新しい構造を作成できている。竹中工務店は、住宅を対象に、より軽量な素材と動的な部品を使用するジェネレーティブデザインを実施している。

ブラム :マテリアルインフォマティクス(MI)など材料科学分野の研究が進めば進むほど、デザインのための最適な材料コンポーネントを選択できるようにモデルが訓練され、より詳細な情報をデザインに組み込めるようになるからだ。MI分野への投資が伸び、研究が進むことを期待している。

IoTデータを使って工場のあり方を考える「I-Factory」

――製造プロセスと設計プロセスの融合において、IoT(モノのインターネット)データは、どう関係してくるか。

ゾーンズ :工場などの建屋を設計・建築する際に建設業が構築・利用するデジタルツインに組み込まれていくだろう。建設業は今、設計時から3Dモデルを作成し、建屋のデジタルツインを構築・運用し始めている。このデジタルツインにIoTデータを取り込めば、製造ラインを含めて、どのように建設するかの洞察が得られるようになる。こうした考え方を「I-Factory」と呼ぶ。

 私たちも関与した独ポルシェの自動車製造工場が、その一例だ。当社のプラットフォームを用いて工場を設計し、製造ラインで取得したIoTデータを加味することで、設計や製造計画の変化に合わせて製造ラインを修正できるようにしている。

ブラム :ポルシェの例は、データに基づいて工場を動的に再構築するための試みだ。データは次の工場を建設する際にも使用でき、スマートだった工場を、よりスマートに建設できようになる。

――製造業の課題に対しAutodeskは、どう対応していくか。

ブラム :サプライチェーンにおいて、さまざまな人や組織と協力し、チームワークを醸成することを支援していく。そのために、データがどこで作成され、どこで更新・修正されたかに関わらず、ワークフローの全工程でアクセスし利用できるようにしたいと考えている。

 そうした環境をオープンなプラットフォームとして設計し業界別クラウドを構築するのが目標だ。2022年の自社イベント「Autodesk University 2022」では、製造業向けクラウド「Fusion」を発表した(関連記事)。API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を用いたカスタマイズにより、Autodesk製品だけではなく、サードパーティー製品の機能も活用した、顧客にとって最良のワークフローの実現を目指している。

ゾーンズ :CCOとして牽引しているチームは、世界中の顧客企業が成果を達成できるよう支援している。プランの作成から実装に至るまで、長期的な成功を収められるように積極的に協力している。顧客企業の価値向上の具体的は目標として15億米ドルを掲げている。その達成過程において当社製品群も共に成長できればと考えている。

ブラム :オープンなプラットフォーム上で連携することで、データをより多くの利用者が使えることが重要なゴールの1つだと考えている。それができなければ、デザインとビジネスのデータを結びつけることは難しく、何よりもCX(Customer Experience:顧客体験)の改善・向上ができなくなるからだ。