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レガシー問題は経営問題、“持続的”な企業基盤としてのクラウドを再考する【DIGITAL X Forum 2019】

DIGITAL X 編集部
2019年4月4日

AWS:顧客を中心に据え常に“Day One”で

 利用事例を伸ばすクラウドの1つがAWS(Amazon Web Services)。AWSジャパンの中山 裕之 事業開発本部エンタープライズ担当は、DXに取り組むための「イノベーティブな組織の作り方」について自社を題材に紹介した。

写真4:AWSジャパン 事業開発本部エンタープライズ担当の中山 裕之 氏

 Amazon.comの設立は1994年。本の通販を皮切りに、2012年からは生鮮食品の取り扱いも始めている。ただ中山氏は、「振り返れば2006年のAWSの提供開始が大きな転機だった」と話す。「2001年ごろからITが新規サービスの足かせになっており5年をかけて抜本的に見直した結果としてAWSが生まれた」(同)からだ。

 クラウドを基盤にすることでAmazonは、同社のビジョン「地球上で、最もお客様を大切にする企業であることを徹底して実行できている」と中山氏は説明する。その一例が無人レジのコンビニ「Amazon Go」。Amazonで注文すれば1~2時間で届けられるにもかかわらず「『すぐ食べたい、すぐ飲みたい』といった顧客の声にこたえるために実店舗を立ち上げた」(同)とする。

 顧客優先のサービス開発で重視されるのが「エビデンス(証拠)となるデータだ」と中山氏は明かす。Amazonの事業判断はデータに基づいているという。それに「毎日が常に“Day One”」との考え方が加わる。「現状維持や思考停止を最も恐れている。初心を忘れず、意思決定を超高速に回している」(同)という。

 たとえば、Amazonが提供するモバイルアプリを含めれば、「1秒に1回以上デプロイしている」(中山氏)という。2018年11月に米ラスベガスで開催した年次イベント「re:Invent 2018」でも会期の5日間に100近い新サービスを立ち上げた。

 AWSを利用する日本企業も増えている。AGC(旧旭硝子)は基幹系システムをAWS上に移行した。ITインフラの刷新だけでなく、「IT部門内に新しいことに挑戦しこうという雰囲気が醸成された。安定したインフラを提供する立場から、ビジネスに貢献する立場へと組織風土の変革につながっていると聞いている」(中山氏)。

 必要な時に必要なテクノロジーリソースを無限に使えるクラウドだが、中山氏はクラウドの特徴として「捨てられること」も挙げる。「さまざま実験を早期に実施でき、トライアンドエラーによるビジネスの高速化が図れる」(同)ためである。

 そんなメリットを感じてか、「2017年と2018年は、利用企業によるAWSの認定資格取得者が急増した」(中山氏)という。業務改革のスピードを速めたいというニーズの高まりは、「システムの内製化という動きにつながっていく」と中山氏は指摘した。