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高齢化社会を視野に注目が集るデジタルヘルス、エイジテック、アクセシビリティ

「CES 2024」から、デジタルヘルス領域のトレンド

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2024年3月29日

アクセシビリティ製品は他分野で使われる最新技術を応用

 エイジテックとも関連があり、かつテクノロジーとして一歩先行しているのが、視聴覚や身体の障がいをサポートするアクセシビリティ分野だ。他分野で使われているテクノロジーを応用する動きが進んでいる。具体的には自動運転の自律走行に使われるカメラやLiDARを使って、歩行者をサポートする製品が複数出展されていた。

 その1つが、米Glidanceが製品化を進める「Glide」だ(写真5)。自律走行する小さなクルマを白杖代わりにする。同社は、元米Microsoftの社員で自身も全盲というAmos Miller(アモス・ミラー)氏が立ち上げた。米Ximiraは、移動をサポートするウェアラブルシステム「PHINIX」を開発している。AIカメラでて周囲を3次元で視覚化し、音声や振動を使ってフィードバックを提供する。

写真5: Glidanceの「Glide」は自律走行するミニカーで視覚障がい者を目的地へ誘導する。創業者のAmos Miller(アモス・ミラー)氏が直接説明していた

 視覚障がいのサポートでは、VR HMDやスマートグラスが持つカメラや音声ガイドを応用するケースもいくつかあった。高齢化による視力の低下だけでなく、老眼や極端な近視、遠視などにも使える。アクセシビリティ用の機器は値段が高いのが課題だが、利用者層を広げられれば価格を下げられる可能性がある。

 他にも、既存のスマートグラスに周囲の話し声をテキスト化しAR(Augmented Reality:拡張現実)技術で表示する「Xander」や、普通のメガネに取り付け写ったテキストを読み上げる小型カメラ「Orcut」は、見た目には、障がいがあると分からないデザインになっているのも特徴である。

 手を使わず脳波でPCやデバイスをコントロールするBMI(ブレインマシンインターフェース)と連携する生活サポートシステムの開発も進んでいる。スイスの研究機関CEAは、イーロン・マスク氏が率いる米Neuralinkと同じく、脳に物理的なインタフェースを埋め込む「WIMAGINE」を開発している。

 会場展示では、ヘッドバンドやヘッドギアを使って、寝ころびながらでもスマホを操作したりテレビのチャンネルを変えたりと、より手軽に使えそうな製品が多かったが、高度な技術を使った製品もある。カナダのソフトウェア会社AAVAAが開発するデバイスは、脳波に加えて、頭の向きや、目の動き、顔の微妙なジェスチャーでもデバイスを細かく操作できる(写真6)。ゲームや仕事、高齢者の日常生活にも応用できることを目指している。

写真6:AAVAAが開発するBMI。写真のヘッドバンドのほか、イヤホンやメガネ型デバイスにも搭載できる

 ロボティクス技術を使ったパワーアシストも複数出展されていた。既に倉庫や工場、介護分野での活用が始まっているが、日常使いとして小型・軽量化され、デザインもシンプルで使いやすいものが登場しており、今後はアクセシビリティやエイジテック製品としても注目されそうだ。