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【CES2025:生成AI編】生成AIによるAIエージェントが種々のデバイスに搭載されていく

大手企業はAI技術に関するビジョンの打ち出しで競う

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2025年2月7日

マーケティング分野で生成AI活用が話題

 CES2025では、300以上あるカンファレンスのうち100超がAI技術に関するものだった。そんな生成AIを最も取り上げていたのは、広告やエンターテインメント、コンテンツ制作などの業界トップ企業が出展する「C Space」かもしれない。メイン会場などから離れた高級ホテルで、ビジネスミーティングやカンファレンス中心に開催される(写真10)。

写真10:生成AIが大きく取り上げられた「C Space」では若い世代や女性の姿が目立った

 テーマは、基礎から最新情報まで幅広く、広告やマーケティングの現場での生成AIツールの活用事例や、ハリウッドやクリエイティブ業界に生成AIが何をもたらすかの予測などもある。アドバイスを得ようと多くの参加者が集まった。参加者は比較的若く、会場の外でも熱心に意見を交わしていた。

 会場では中国TikTokが、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)戦略に利用できるAIツールを紹介していた。広告ソフトウェアを開発する米Viant Technology は、撮影した動画を投稿先にあわせてカスタマイズし数分で配信できるサービスや、業界別に適切な広告戦略を提案するツールのベータ版を紹介した。

 個人的には、コンサルティング会社の米デロイトが主催したカンファレンスでの米Salesforceのサービス利用者へのアドバイスが印象に残っている。「生成AIを学ぶにはどうすればよいか」という質問に対し、「外に出て積極的に学ぶこと。20分もあれば学べるツールやサービスがいくつもある。生成AIが理解できているかどうかは、お気に入りがあるかどうかで分かる。自分が使いやすいツール/サービスを探してみることも大事だ」と答えていた。

華々しい展示の一方で本格的な使用までには時間が必要か

 さまざまな生成AIが見られたCES2025だが、それらが本格的に使われるまでには、もう少し時間がかかると思わせるところもあった。例えば、前回、大きな話題になった手のひらサイズのAIデバイスは今回、ほぼ姿がなかった。数が増えたスマートグラスのほとんどは、スマホに接続する必要がある。新しい使い方やアイデアの提案も少なく、「まずは使えるようにした」という段階だと言える。

 AIの普及に向けては、セキュリティやプライバシー、ハルシネーション(幻影)、ディープフェイクなど、安全・安心さや倫理面の課題にも取り組まねばならない。また生成AIが動作するデータセンターの消費電力が上昇している。米Googleは2024年7月、年次環境報告書で「気候変動につながる温暖化ガスの排出量が4年間で約5割増加した」と発表した。

 エネルギーをはじめ環境に与える影響は、テック業界全体の課題になっている。CESでは注目カテゴリの1つに「サスティナビリティ」が挙げられた。会場でも省電力や環境に配慮した自然エネルギーの供給などに関する製品が出展された(写真11)。ただ実用化までには時間がかかりそうな印象が強い。

写真11:環境やエネルギーの課題解決策の展示は多いが、実用化までには時間がかかりそうだ

 ただ、PCや携帯電話がそうだったように、数年後には省電力で小型化され、処理速度も速い生成AIが登場する可能性は高い。CES2025では、あまり見られなかった量子コンピューターも開発が進んでいる。CTAが言うように次回のCES2026では、さらに進化した生成AIが登場することを今から期待したい。