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社会課題解決に挑むテック企業が躍進するアフリカ、人材不足に直面する日本とのマッチングに期待

アンカー神戸の「Kobe x Africa Initiative 2025」より

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2025年7月30日

 アフリカのポテンシャルについて寺久保氏は「インフラや公共交通の整備が不十分な中、誰もがスマホを所持し、電子決済やAI(人工知能)技術を使った社会の仕組みを作るなどダイナミックな挑戦ができる。将来的には大企業に成長するであろう会社と今からつながれるという点でも他の地域より面白い」と話す。

 その上でアフリカのビジネスについて「自社製品を売り込むのも大事だが、現地がどう良くなるかという将来的な視点も必要なのではないか」とアドバイスする。

 現地での関係構築の重要性は吉田氏も「実感している」とする。「食事をしたり一緒に学んだり、互いに興味を持つことで関係が築け、次のビジネスにもつながっている」(同)。今後は国が進めるEV(Electric Vehicle:電気自動車)導入において「まとまったビジネスを獲得できるよう、Data Ekiを通じて現地の情報収集やビジネス活動を展開していく」(同)とする。

 寺久保氏は「ビジネスに関しては浅い話で終わらず解像度を高めることも大事だ」と助言する。Samuel氏も「解決しようとした課題が1つだとしても、周辺課題にまで取り組まなければならないケースが多い。そこを相互に理解できればビジネスは上手く進むのではないか」と話す。

 吉田氏は自らの経験から「いきなり現地に進出するのは難しいし、既に進出している会社と一緒に取り組むのも、なかなか難しい。JICAが提供する現地進出のための仕組みや補助金、プロジェクトを活用するのも1つの方法ではないか」とした。

農家の信用度評価モデル開発や救急関連サービスなども

 本イベントでは、ナイジェリアを中心とするアフリカのスタートアップ数社が紹介された。

 Zowasel(ゾワセル)は農家を対象に耕作物をオンラインで売買するマーケットプレイスを運営している(写真6)。そのためのデータベース構築やAI技術の活用に取り組む。ナイジェリアをはじめ、ケニア、タンザニアに拠点を置いている。

 農業機材の貸出なども手掛け、その際に連携した三菱商事とは貸出先の信用度を評価するクレジットスコアリングモデルを確立した。同モデルは現地の銀行からも利用したいという要望を受けており、他分野へ事業拡大させている。

写真6:農家向けマーケットプレイスを展開するZowaselは貸出先の信用度評価モデルを確立し、アフリカ全土へのビジネス拡大を図っている

 8Medical(エイトメディカル)は、24時間365日出動する有料の救急サービスを提供している(写真7)。現地には日本の「119」に相当するサービスがなく、モバイル技術を使って受付・対応する。メニューを多方面に拡大しており、アフリカ全土への進出を目指す。

写真7:ナイジェリアにはない「119」の救急サービスを有料で提供する8Medical

 BetaLife(ベータライフ)は、AI技術を活用しアフリカの血液不足問題に挑んでいる(写真8)。献血需要をデータ分析により予測し、輸血製剤の分配の最適化を図ることで、輸血が必要な人に、より迅速に届ける仕組みを構築している。

写真8:BetaLifeはデータ分析により輸血製剤の、より迅速な配送に取り組んでいる。写真は CTOで共同創設者のOkwoli Mathew Adah氏

 コモディティ(日用品)化が進むモバイルやAI技術は新ビジネスを立ち上げる際の垣根を下げ、社会課題の解決という明確な目標を持つ地域ほどイノベーションが進んでいる。若くて成長エネルギーにあふれるアフリカのスタートアップが今後、どのように躍進していくのか、その動きから目が離せない。

 ちなみに神戸市は、アフリカとの共創によって社会課題解決とビジネス支援をテーマにするイベント「アフリカビジネスフォーラム2025」を2025年8月26日に開催する。「アフリカの社会課題を解決するビジネスアイデアコンテスト」の最終選考も実施し、世界から応募された230件以上の中から14件のファイナリストが登壇する予定だ。