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社会課題解決に挑むテック企業が躍進するアフリカ、人材不足に直面する日本とのマッチングに期待

アンカー神戸の「Kobe x Africa Initiative 2025」より

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2025年7月30日

神戸市は2025年5月16日、日本企業とアフリカのスタートアップの協業に向けたイベント「Kobe x Africa Initiative 2025」を開催した。アフリカは、2050年には世界の4人に1人がアフリカ地域出身者になるとされ、その成長に伴う新たなビジネス市場として世界から注目が集まっている。そのアフリカと神戸市は早くからビジネス連携を進めてきた。アフリカに、どのようなビジネス機会が見いだせるのか、同イベントから紹介する。

 近年、世界経済は大きく変化しており、中でもアフリカは人口増加や高い経済成長により世界から注目を集めている。インフラの整備や政治の不安定さが課題とされるものの、デジタル技術を用いたアグリテックやフィンテック、豊富な資源を活かしたエネルギーテックが進んでおり、若くて才能のある人材が次々に新しいビジネスを生み出している。

 そのアフリカのスタートアップと日本企業との協業に向けたイベント「Kobe x Africa Initiative 2025」(主催:アンカー神戸)が神戸市で2025年5月16日に開催された。

人口増が続くアフリカに若くて優秀な人材が育っている

 基調講演に登壇したJICA(国際協力機構)専門家の渡邊 慎平 氏は「今や、広い土地に野生動物が生息するサバンナのようなイメージはアフリカのほとんどの地域にない。北側は中東との結びつきが強く、西側はフランス語を、東側は英語を話すなど地域により特色が異なる。ビジネスを始めるにあたっては、こうした違いを理解しておく必要がある」と話す(写真1)。

写真1: JICA(国際協力機構)専門家の渡邊 慎平 氏はウガンダのIT産業振興プロジェクトを担当している

 国連の人口予測を見ても、アジアが変化がない、あるいは下がる傾向にあるのに対し、アフリカは大きく伸びる。なかでもナイジェリアは、2054年に米国に次ぐ5位、2100年には4位になるとされる。若くて優秀な人材が育っているが、アフリカ各国では雇用の受け皿が限られるため、人手不足の日本とは今後、補完関係が築ける可能性がある。

 渡邊氏自身は現在、ウガンダのIT企業と日本企業のビジネスマッチング、ウガンダの起業家の海外市場開拓支援などに注力しており、ケニアやルワンダを含む東アフリカ地域をメインフィールドにしている。そこではデジタル技術の活用も進んでいる。

 例えばケニアのスーパーマーケットでは2017年頃から携帯電話を使ったモバイル決済が普及し始めており、年齢層を問わず使われている。技術導入に対する垣根が低く、スタートアップもデジタル技術を積極的に活用していることが背景にある。

 ウガンダでは、エンジニアや開発人材が育っている。日本企業がアプリケーションやWebを対象にしたオフショア開発の委託先にしている例や、AI(人工知能)ソフトウェアのテストマーケティングとして連携している例もあるという(写真2)。長崎県五島列島の医療医薬品のドローン配送では、アフリカ発スタートアップZiplineの技術が使われるなど先端技術分野での連携も始まっている。

写真2:ウガンダは日本企業のオフショア開発の委託先に選ばれている

 アフリカに進出する企業に対してJICAでは、開発途上国などでSDGs(持続可能な開発目標)ビジネスを目指す中小企業のPoC(Proof of Concept:実証実験)に提供する補助金や、社会課題解決に貢献するイノベーティブな事業を支援する共創促進プログラム「QUEST」などを用意する。ウガンダ限定ではあるがIT人材のインターンシップの受け入れ先募集なども実施している。