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設計者の“意図”を汲み取る「ニューラルCAD」が人間の創造性を解放する

「Autodesk University 2025」より

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2025年11月28日

2018年からのAI技術の研究開発が今に続いている

 ヘイリー氏のリサーチ部門では2018年に専門組織「AIラボ」を設立した。AI技術を使った設計方法として、主に部品の軽量化や強度向上など性能の最適化を目的にした「ジェネレーティブデザイン」などに取り組んできた。

 最近では2024年に「Project Bernini(プロジェクト・ベルニーニ)」(関連記事)を発表している。基盤モデル構築のための実験的プロジェクトで、テキストやスケッチなどから3Dモデルを生成する仕組みである。

 現在はニューラルCADにつながる「Project Think-Aloud(プロジェクト・シンクアラウド)」に取り組んでいる。「作業中の発話やスケッチをAI技術で解釈し、設計にリアルタイムに反映させる。設計者の意図を先読みし、部品名を自動で提案したり、関連ヘルプを表示したりする」(ヘイリー氏)仕組みを開発する。

 ヘイリー氏は「これら設計のための研究開発の蓄積が、ニューラルCAD構想の下支えになっている」と話す。ではニューラルCAD構想は、どの程度まで開発が進んでいるのだろうか。Autodesk University 2025では、製造業、建設業、メディア・エンターテイメント(M&E)業における現状がデモンストレーションされた。

製造業での利用例

 「エアフライヤー(熱風による揚げ物調理器)」という概念を投げると、AI技術が、一般的なエアフライヤーの表面形状やふち(エッジ)、位相(トポロジー)を推論しCADモデルを生成する(図1)。生成過程では「ノード(点)を浮かび上がらせ、3Dの幾何学構造そのものを思考し描写する」(アナグノスト氏)という。

図1:ニューラルCADを使ったエアフライヤーの3D CADモデルの生成イメージ

 生成したCADモデルは「フィレット(丸み)の半径を変更したり、シェル化(肉抜き)したりの編集作業ができる。下流のCAM(Computer Aided Manufacturing:コンピューター支援製造)やCAE(Computer Aided Engineering:コンピューターによる開発)にもつなげられる」(アナグノスト氏)とする。

建設業での利用例

 建物タイプ(集合住宅など)や主要部材(木)など大まかな形状(マスモデル)を指示すると、構造やコストといった制約条件を加味しながら、ユニットの構成や廊下、必要な設備スペースなどの内部レイアウトを生成し、建築物として成立する一般的なパターンを推論する(図2)。

図2:建築物全体の推論では、構造ルールや一般的な間取りを推論し、編集可能な設計データを修正する。建物の外構を変更すると内部レイアウトも自動で微調整する

 生成された3D CADモデルでは、壁や柱を選択して移動したり変更したりができる。建築家や設計者はAI技術が提示したプランを比較検討し、施主の要望に合わせて修正すればよい。例えば「木造とコンクリート、どちらがより多くのユニットを効率的に配置できるか」といった検討もできるとする。

メディア・エンターテイメント業での利用例

 アニメーション作成用ソフトウェア上で、登場するキャラクターの動線上に「どちらに進み、どこで曲がるか」のポイントとなるキーフレームを入力すれば、腕の振りや体重移動などのリアルな人間の動きを推論する(図3)。

図3:アニメーションのキャラクターの進む方向を指示すれば、リアルな人に近い動きを生成する

 アニメーターは監督の指示に沿ってキーフレームを編集すれば、キャラクターの動きも修正される。アニメーターは「1週間に4秒分の動きしか作れないような作業を減らし、キャラクターの演技やシーンの演出といった創造的な作業に集中できる」(アナグノスト氏)とする。