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エグゼクティブが語るデジタルトランスフォーメーション成功のカギ
コニカミノルタ、みずほ銀行、NTTドコモ、エー・シー・エス債権管理回収の取り組み
DX実現に向けテクノロジーで“経験と勘”の世界から抜け出す
堀田 デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、テクノロジーを使ってビジネスプロセスを変えることであり、そのためには人が重要です。つまり「DX = テクノロジー × プロセス × ピープル」という式で表され、どれか1つがゼロになれば、すべてがゼロになります。まずは、テクノロジーで重視しているポイントは何でしょうか。
江口 アナログの世界をデジタル化するのに欠かせない技術の1つが、画像認識技術です。クラウドベンダーの汎用的なサービスにはないプロフェショナルユースの画像認識やアルゴリズム、ディープラーニングを開発できる独自環境を用意しています。そこにSASの技術を使ったデータ分析を組み合わせることで価値を創りたい。そのために、スピーディーにデータを活用できる独自のプラットフォームも整備しています。
表寺 債権回収業におけるDX事例が少ないため、他業態の先進的事例と40万件のデータを組み合わせることで、従来の勘と経験の世界からの脱却を図っています。幸い、スコアリングモデルは融資の世界では使われていた手法なので、それを債権回収に展開しています。スコアリングモデルを活用することで、属人的だったノウハウからも開放されます。
半田 新たに開発した与信判断や、事業性評価の仕組みを構築するうえでのポイントは2つありました。1つは大量かつ多様なデータを確実にハンドリングできること。もう1つがモデルを構築するにあたり、そのモデルを常にチューンナップしていくことです。そのためのソリューションとしてたどり着いたのが「SAS Viya」でした。
これまで銀行で使うソフトウェアは、自社で開発し自社で管理運用し、外部には出しませんでした。アジャイル開発やマルチベンダー開発も苦手ですが、そこにチャレンジしています。2019年5月に発表した5カ年計画においても「オープン&コネクト」を標榜していますが、それを実現した形になっています。
長谷川 情報システム部門の立場から見ると、DXには大きく2つのステップがあります。1つは業務プロセスをデジタル化し可視化していくステップ。つまりオペレーションの可視化です。
第2ステップは、可視化したモノをデータでとらえて活用し、プロセスを変革することです。これらをITでどう実現していくのかを考えることがIT部門に求められています。社内にはデジタル化されずブラックボックスになっている業務が一杯あります。たとえば、ドコモショップの販売員が顧客とどう対応したかはデータ化されていません。
また基幹システムのデータをマスターデータマネジメントとしっかりと統合し、活用できる状態に保つことも欠かせません。勘と経験による業務から脱し、数値で業務を評価し、課題を抽出し、それを高速に解決していくといった企業体質に変えていくことも重要です。そこでのIT部門は、スピード経営についていけるよう、アジャイル開発に開発スタイルを変更していく必要があります。
プロセス変革のためのデータ活用環境が必要
堀田 次にプロセス変革です。これまでの営みを変える過程では、チャレンジだけではなく苦労もあるはずです。
長谷川 プロセス変革は簡単そうに見えて、企業文化を変えていくほどに大変な作業です。一部の組織だけがDXを推進しても、企業全体の変革にはならないからです。企業文化を変えていくためには、企業トップがしっかりコミットすることが重要です。
ドコモの場合、顧客対応プロセスのデジタル化を推進するために、デジタルマーケティング推進部を2018年に新設しました。IT部門がDXのための環境を構築し、デジタルマーケティング推進部がプロセス変革をけん引する役割を担っています。
表寺 債権回収の世界では弁護士事務所と連携するためのツールとして紙が多用されています。そのフォーマットはバラバラで、業務における事務作業のボリュームが大きくなっているのが現状です。当社では、プロセスの流れを図にしてみたところ、1つのシステムを何回も利用していたり、同様の業務を何回も繰り返したりしていることがわかりました。
そこで、いろいろなベンダーと相談しましたが「内容が複雑なのでフルスクラッチになる」との回答ばかりでした。それでは時間もコストもかかります。ところが現場と話し合ってみると、2つのパッケージを使って少し開発すれば実現できそうだという知恵が出てきたのです。「SAS Marketing Automation」を使って開発中の仕組みがそれです。これが実現すればプロセスが改革され、効率化が進むと考えています。
江口 コニカミノルタのプロセス改革を進めるにおいて必要だと考えているのは、データを活用する意識です。その意識を変えるために、データ分析を理解している人とデータ分析のプロが事例を作り、全社に拡げていっています。当社がこれから展開するのは、データを活用したソリューション提供という新しいビジネスです。データ分析者が顧客の課題を見つけて提案するというプロセスが入ってきます。これは新しい挑戦です。
半田 みずほ銀行のプロセス改革は顧客起点で考えています。顧客のペインポイントを把握するため、独自にインタビューやアンケートを実施したところ、お金の借り方に満足されていないことがわかったのです。
デジタルを手段に、顧客のペインポイントをどう変えれば、より良いモノが提供できるのか、満足していただけるのかを徹底的に考えました。最終的には、当社がどんな思いでサービス提供しているのか、その思いを中小企業の経営者と共有することで何ができるのかを一緒に考えられたことが、プロセス変化の大きなカギになりました。