- Talk
- 共通
東京電力とJCBが取り組むDX、大規模アジャイル開発方法論で組織から変える
「Japan SAFeシンポジウム 2024」のパネルディスカッションから
一條 :新しいものに対する好奇心を受け入れて自分ごと化し、実践していく。それをずっと繰り返していくことについて、中田さんはどう考えますか?
中田 :私は元々、金融ITのエンジニアやPM(プロジェクトマネジャー)をやってきました。2000年の初頭ぐらいに「反復開発」という手法に出会い、それを使って開発のアジリティを高めようと試行しましたが、うまくいきませんでした。
その後は、アジャイル開発にチャレンジし、大規模プロジェクトでは難しいと感じていた2020年にNTTデータからSAFeのフレームワークを紹介してもらいました。その内容を見たときに、これまで自分がアジャイルに対して「足りない」と思っていた重要なポイントが含まれていることが分かりました。
具体的には、既存の仕組みを残しながら、それを活用し、新しいプロダクトを作っていく人たちが集まって、ビジネスとシステムが一体になってスクラムで開発していく枠組みです。SAFeの知識体系を取り入れれば、当社でもアジャイル開発が実現できるのではないかと思いました。
安定性と俊敏性のそれぞれを目指す“2つの組織”を共存させる
一條 :レガシーな仕組みを残しつつ新しい領域にチャレンジしていくのは、実際には難しいと思います。
中谷 :多くの組織は20世紀最大の発明の1つだされる階層型組織で、現行ビジネスを回しているわけです。そこにはスタビリティ(安定性)が求められます。一方、変革やイノベーションにはアジリティ(俊敏性)が必要であり、ネットワーク型である横串の組織機構が求められますが、従来の安定的な縦の系統に横串を刺そうとすると、うまく動けなくなります。
そこで、スピードやアジリティについては、階層型とは別のネットワーク型組織を持つことを提案しています。既存の階層型組織では効率を磨き上げ、ネットワーク型組織ではスピードとアジリティを追求する。この両輪を回すことでビジネスを変革していけるのではないでしょうか。
一條 :変革を通じて学ばれたことやリーダーシップについては、どのようにお考えですか?
関 :今のポジションに就いて約7年が経ちました。やはりリーダーの存在は非常に重要だと思います。リーダーとは結局、リスクを取ることで。部下には「思うようにやってこい、最終的な責任は自分が取る」と言えることがリーダーシップでしょう。
ゴールを明確にし、自らが先頭を切り、汗をかいて、部下にはメンターとなって応援し育てていく。最後は、「責任は取るから、やりなさい」と言えば良いのかなと思いながら取り組んでいます。
中田 :意思決定権を持つ者として、「正しいやり方は何か」「アジリティを高めるには、どうすれば良いのか」について、しっかりと学び、リーダーシップを発揮していくことが重要だと思います。
当社では、SAFeの全体像を学ぶ「Leading SAFe」という研修プログラムを経ずにSAFeに取り組み始めました。結果、途中で、さまざまな問題が起きアジリティが高まらない状況に直面しました。そうした失敗を経て、私も役員も、しっかり研修で学んでから正しく行動できるようにしてきました。「最初にしっかり学んでから進める」ということが、みなさんへのアドバイスになると思います。
関 :日本は変革の中にあります。自信を持ってチャレンジすべきだと思います。外に出て世界を知り、勉強することが、自分たちの良さを再認識することにつながります。受け身ではなく、自らが、どんどん行動し、自信を持ってチャレンジしてほしいということを付け加えたいと思います。
一條 :TEPCOとJCBにおける変革への取り組みは、多くの方にとって大きな学びの材料になると思います。貴重なお話をありがとうございました。