- Column
- 大和敏彦のデジタル未来予測
政府の「クラウド バイ デフォルト原則」が推すクラウドの価値と検討ステップ【第52回】
政府が「クラウド バイ デフォルト」を提唱し、クラウドの活用を推進している。政府の方針およびクラウドの選択プロセスから、クラウドの最新動向と、そのメリットと活用について改めて考えてみたい。
クラウドの役割は、既存システムのためのインフラから、新ビジネスを支えるシステムやデジタルトランスフォーメーション(DX)のためのプラットフォームへと進化してきている。様々な先進テクノロジーやクラウドの活用方法が広がっているからだ(関連記事『コロナ禍で加速するクラウド活用を支えるクラウドの進化【第43回】』)。クラウド活用を進めることは、DX推進に必要不可欠になっている。
そうした背景から、企業のクラウド活用は広がり続けている。IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などのクラウドインフラへの企業の世界の支出額は、SaaS(Software as a Service)を除いて、2021年第3四半期に450億ドルを超え前年度比37%増加した(米Synergy Research調べ)。SaaSにおいては、前年度比で20%以上増え1455億ドルに達している(独Statista調べ)。
しかし、国内のクラウド利用は2019年度に64.7%にとどまっている(『令和2年情報白書』)。政府のデジタル化も、『デジタル政府ランキングに見るDXの要件【第38回】』で述べたように、デジタル国家ランキングが14位であり、前回の10位から後退した。
クラウド化推進に大きく舵を切った日本政府
こうした状況を改革するため政府は『政府情報システムにおけるクラウド サービスの利用に係る基本方針』を2018年6月に策定している。その目的としては「単にクラウド活用を進めるだけでなく、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、ビッグデータ、ロボットなどのテクノロジーの活用を進め『Society 5.0』を実現し、種々の問題解決を図ること」を挙げる。
さらに政府は2020年2月、『世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本方針』と『デジタル・ガバメント推進方針』を発表した。そこでは、デジタル強靭化実現に向けた基本的な考え方と、狙いとしての「働き方改革、学び改革、くらし改革、災害対策、社会基盤の整備」などが述べられている。
その中で唱えられたのが「クラウド・バイ・デフォルト原則」である。クラウド・バイ・デフォルトとは、「情報システムを開発・整備する際に、クラウドサービスを第一候補にする」ことだ。
併せて、「クラウド上での機能の共通部品化」と「共通アプリケーション化方針」も掲げ、それらとクラウドサービスとして提供される機能を組み合わせて使うことを方針として挙げている。信頼できるシステムの迅速な展開を可能にするのが狙いである。
さらに2021年3月30日には、より具体的な『政府クラウドサービス利用に係る基本方針』を発表した。この基本方針では、背景と目的、基本方針、具体方針が述べられると共に、クラウドに関する疑問とそれに対する回答をコラムの形式で掲載している。そのいくつかを紹介してみたい。