• Column
  • 大和敏彦のデジタル未来予測

モバイルネットワークが支えるIoTのこれから【第59回】

大和 敏彦(ITi代表取締役)
2022年8月22日

さまざまなIoTシステムにモバイルネットワークが利用されている

 表1にみられるように、モバイルネットワークによるIoTが、さまざまなサービスに使われている。屋外でのIoT接続や柔軟な接続を実現するためには、モバイルネットワークが使われることが多いためだ。米Cisco Systemsの『Annual Internet Report』では、2023年にはネットワークにつながるデバイス数は300億個弱に達し、そのうちの45%がモバイル接続になると予測されている。

 IoTのためのモバイルネットワークの活用は今後、5G SA(Stand Alone)による高速化や、ネットワークスライシングによる多様な用途への対応が進むにつれて加速する。『社会インフラとしての5G【第54回】』」で述べたように、5Gは、コネクティッドカーだけでなく、IoTを応用したスマート工場やスマート物流、スマートシティやスマートヘルスケアといった各種のDX(デジタルトランスフォーメーション)をさらに高度化し、新しい利用方法を生み出していく。

 具体的には、より高精細な画像によるコミュニケーションやその応用、リモートオペレーション(遠隔操縦・遠隔監視)、センサー情報に基づく自動化、AI(人工知能)技術の進化とそのためのデータ取得、超低遅延を活かした自動運転や遠隔治療といったリアルタイムな判断・制御分野などが挙げられる。用途が広がりクリティカルな使い方が増えてくると、ネットワークの信頼性はますます重要になってくる。

 IDC Japanによれば、国内IoT市場におけるユーザー支出額(見込み値)は2021年に5兆8948億円、2021年~2026年の年間平均成長率(CAGR)は9.1%が見込まれる。そこでのユースケースの上位10種を表2に示す。例えば製造業では、生産プロセスのスループット向上、品質レベルの監視、生産に関係するリソースの最適化、エネルギーコストの削減などが挙がる。

表2:国内IoT市場において2021年度にIoTユーザーの支出額が多いユースケースのトップ10(IDC Japan資料より作成)
順位ユースケース
1製造オペレーション
2製造アセット管理
3スマートグリッド/スマートメーター(電気)
4スマートホーム(セキュリティ)
5公共インフラ管理
6公共交通のための情報システム
7公共安全システム
8コネクティッドカー
9スマートホーム(オートメーション)
10オムニチャネルオペレーション

 ほかにも、社会インフラの老朽化対策や交通システムの高度化、スマートグリッド、スマートホームといった分野での利用が拡大している。農業現場へIoT機器を導入し農作業を可視化・監視するスマート農業や、種々のセンサーや制御システムによってビル内の環境を管理・最適化するスマートビルディングへの活用も期待されている。

 さらには、労働人口不足を解消するための自動化や、メタバースによる各種環境のデジタルツイン化、データドリブンのためのデータ分析ツールやAI基盤へのデータ収集などによってもIoTの適用は加速していく。モバイルネットワークの拡大・高速化に伴い、デジタルの需要発掘やデジタルによる新産業・新サービスの発展が見込まれる。