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DXのためのサービスが求めるクラウドの現状と進化【第83回】
クラウドコンピューティング(クラウド)と生成AI(人工知能)の需要がデータセンター(DC:Data Center)市場を加速させている。その実状は『生成AI需要がデータセンターへの投資を加速し新形態を求める【第80回】』で紹介した。今回は、クラウドの現状と今後を考えてみたい。
2024年7月19日(日本時間)、世界同時多発のシステム障害が発生した。米クラウドストライクが提供するソフトウェアのアップデートの欠陥が原因だ。IT史上、最大の障害とも言われ、銀行システムや医療ネットワーク、ニュース放送、フライト管理システムなどが停止し、多くの業界に影響を与えた。
クラウドストライクは、クラウドプラットフォームをベースにセキュリティ機能を提供する企業で、セキュリティシステムで18%近いシェアを持っている。クラウドベースのため導入が容易で、ネットワークに接続するだけでPCやスマートフォン、タブレットなどのエンドポイントのほか、クラウドワークロードやアイデンティティ(ID)、データなどのセキュリティを実現する。
今回のシステム障害が同時多発の最大規模になったのは、アップデートがクラウドにより一斉に実施されたことと、セキュリティという汎用機能のため業界に関係なく利用者が存在していたことによる。この障害は、クラウド化の広がりと、それに伴う障害の危険性を示した。
成長市場を支える大規模DCの数は2024年に1000超に
クラウド活用が広がる中、その市場も伸びている。米Synergy Research Groupによると、世界の2024年第一四半期のクラウドインフラサービス(IaaS:Infrastructure as a Service、PaaS:Platform as a Service、Hosted Private Cloud)市場は前年度より21%増加し、760億ドルを越えた。
ベンダー別では、米AWS(Amazon Web Services)がシェア31%でリードしている。だが、米Microsoftと米Googleが伸び率では上回り、それぞれ25%、11%のシェアを獲得している。これらハイパースケールプロバイダーが運営する大規模データセンター(DC:Data Center)の数は2024年初頭に1000を越えた。
クラウドインフラの伸びと共にクラウドによるソフトウェアサービスであるSaaS(Software as a Service)も成長している。世界のSaaS市場規模は、2024 年の 3175億5000万ドルが2032年には1兆2288億7000万ドルと年平均成長率18.4%で成長すると予測されている(米Fortune Business Insides調べ)。
クラウドの成長要因は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の広がりと、それを支えるサービスの多様化である。コンピューティング、ストレージ、ネットワークから、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)や配信、ブロックチェーン、機械学習、それらに関するセキュリティ、サプライチェーンなどのビジネスアプリケーションまでがクラウドから提供されている。例えばAWSは2024年7月時点で、324ものクラウドサービス製品を提供している。
SaaS領域では、CRM(Customer Relation Management:顧客関係管理)、ERP(Enterprise Resource Planning:統合資源計画)、HRM(Human Resource Management:人材管理)、BI(Business Intelligence)/分析、運用管理など、さまざまなソフトウェアの機能が提供されている。今後は、コンテンツ、コラボレーション/コミュニケーション領域の伸びが期待されている。自社の強みや新しいアイデアによるニッチな分野のSaaSベンダーも増えている。