• Column
  • Digital Vortex、ディスラプトされるかディスラプトするか

デジタルトランスフォーメーションのジレンマ、一過性のイベントではない【第16回】

今井 俊宏(シスコシステムズ イノベーションセンター センター長)
2019年2月12日

デジタルトランスフォーメーション(DX)が注目を浴びてから久しい。だが実際には、多くの企業で試行錯誤の取り組みが続いている。DXを、なかなか軌道に乗せられない要因は、いろいろ考えられる。「デジタル」という言葉だけが先行してしまい、第10回で述べたように、調和のとれたトランスフォーメーションを実行できなければ、期待通りの成果を出すには程遠い。

 DBTセンター(「Global Center for Digital Business Transformation)が、グローバルな大手・中堅企業のビジネスリーダー約1000人を対象に実施した調査結果によれば、デジタル化が進むことで市場や競合状況が絶えず変化する世界では、多くのビジネスリーダーが「少なくとも数年ごとにビジネスモデルを見直す必要がある」と認識している(図1)。

図1:多くのビジネスリーダーが考える「ビジネスモデルを見直すべき頻度」

 継続的にビジネスモデルを見直す必要があるということは、デジタルトランスフォーメーションが一過性のイベントではなく、継続的に続くプロセスであると考える必要がある。

企業の7割近くがCDOを任命しDXを推進

 DBTセンターの調査結果からは、約84%の企業がデジタルトランスフォーメーションを推進する部門を設置していることも分かる。約65%の企業は、CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を任命、もしくはデジタル化を推進する部門のリーダーなどにCDO的な任務を与え、デジタルトランスフォーメーションの仕事を任せている。

 CDOの任務を請け負う人材は、大きく次の3つのタイプに分類できる。

タイプ1:カスタマーエクスペリエンス(CX)の専門家

 CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)、あるいは広告/クリエイティブ業界の経験を有し、主にマーケティング、コミュニケーション、EC(電子商取引)、顧客誘致、製品開発などの分野にフォーカスする。企業ブランドの向上や顧客接点を強化するツールとしてデジタル化をとらえる。CDOの約25%がタイプ1に相当する。

タイプ2:CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)出身者

 IT(情報技術)の視点でデジタル化を推進する。CDOの約3分の2がタイプ2に相当する。

タイプ3:アジテーター

 スタートアップでの経験やコンサルティングの経験を有し、企業戦略や新たな収益源を追求する。破壊戦略や拠点戦略など攻撃的な戦略を採る際に有効だ。CDOの約10%がタイプ3に相当する。

Chief Transformation Officerの肩書きを持つエグゼクティブも登場

 さらに、全社レベルでデジタルトランスフォーメーションを継続的に推進していく仕組みの構築を模索している企業では、「CTO(Chief Transformation Officer:最高変革責任者)」と呼ぶ役職を設ける企業もある。既存のCTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)との混同を避けるために「CTrO」などと表記されることもある。

 CDOにしろCTO/CTrOにしろ、デジタルトランスフォーメーションの推進権限をフルに行使するためには、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)に直接レポートし、他のエグゼクティブとも対等な立場でデジタルトランスフォーメーションの責任を負うことが望ましい。

 しかし、実際に各社が取り組むデジタルトランスフォーメーションの推進形態は各社各様である。CDOやCTO/CTrOの直下にデジタルトランスフォーメーションの組織を設立し中央集権的に推進する企業もあれば、各組織に権限を分散しバーチャルな組織構造で推進する企業もある。

 中央集権的なモデルでは、並行して推進するプロジェクトの数が多くなればなるほど、それらを自ら管理することが難しくなる。一方、分散型のモデルでは、それぞれのプロジェクト間の連携を取ることが難しい。それぞれに一長一短がある。