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デジタルディスラプターの先行優位性は3年未満【第17回】

今井 俊宏(シスコシステムズ イノベーションセンター センター長)
2019年3月11日

 一方で、文化や風習、地域性などの理由からUberがなかなかビジネスを軌道に乗せられなかった国々では昨今、Uberの競合とも呼べるローカルプレイヤーが頭角を表し、ライドシェアサービス市場は競争が激化している状況だ。

 主なライドシェアサービス提供会社の設立時期やサービス開始時期を今一度振り返ってみると、Uberの設立/サービス開始から、わずか3年未満で同様なサービスが次々と誕生して来たことが分かる(表1〜表4)。

表1:米国の主なライドシェアリングサービス提供会社
会社名設立概要
Uber Technologies2009年3月2010年7月にサンフランシスコでサービスを開始し、その後、全世界へとサービスを拡大
Lyft2012年6月2013年からサンフランシスコエリアでサービス開始し、全米へとサービス拡大
Summon2012年サンフランシスコ周辺のベイエリア、バークレー、シリコンバレー周辺でサービス提供
Via2012年ニューヨークのマンハッタン内の直線移動が定額料金5ドルで利用できるサービス。ワシントンDCやシカゴなどの地域へサービスを拡大。2017年9月にはダイムラーとの合弁会社設立を発表
Carzac2014年ドライバーがどこかへ向かう際に、ついでに乗客をピックアップしてライドシェアするサービス
Chariot2014年3月14人以上の大型車を利用するためのサービス。サンフランシスコ、ニューヨーク、シアトル、オースティンでサービスを展開。2016年9月にFord Smart Mobilityが買収
Juno2015年2016年にニューヨーク・マンハッタンの110 street以南を一律料金10ドルで利用できるサービスを開始。2017年4月にGettが2億ドルで買収
Scoop2015年企業や自治体と連携した通勤に特化したサービス。サンフランシスコ、サンノゼ、パロアルト、サニーベールなどで提供。2016年9月にBMW傘下のBMW I Venturesが出資
Curb2018年Verifone Taxi Systemsから2018年2月に分社。米国内で使えるタクシー配車サービスアプリを提供。対象のタクシー台数は約10万台
表2:中国、アジア主なライドシェアリングサービス提供会社
会社名設立概要
印Ola Cabs2010年2012年7月サービス開始(運営会社はANI Technologies)。所得格差の大きいインドの事情に合わせ、ライドシェアの対象は三輪車のオートリキシャ、バイク、バン、バス、乗用車と多様な選択肢をカバーし成長。「Jugnoo」「Rapido」「sRide」などのライドシェアサービス提供会社としのぎを削っている
インドネシアGo-Jek2011年「Ojek」と呼ばれるバイクタクシー向けに配車アプリを通じたサービスを開始、都市部での渋滞対策と地方での公共交通機関を補う交通手段として成長
ロシアYandex2011年モスクワを拠点にライドシェアサービスを提供。2017年7月にUberのロシア事業をジョイントベンチャーの形で統合し、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ジョージア、カザフスタンなどに事業を展開
中国Didi Chuxing(滴滴出行)2012年Xiaoju Technology(小桔科技)が「DiDi Dache(滴滴打車)」として2012年6月にサービス開始。Tencentが支援するようになり、2015年2月にはAlibaba系の快的打車と合併し「滴滴快的」になる。同年9月にブランド名を「DiDi Chuxing(滴滴出行)」に変更した。2016年7月にUberから中国事業を買収
シンガポールGrab2012年6月マレーシアで創業後、2014年から本社をシンガポールに移し東南アジア事業を強化。東南アジア圏特有の地域性の違い(二輪車対応、現金決済など)をサービスに反映して差別化に成功。2018年3月にはUberから東南アジア事業を買収

(表3、表4は次ページに)