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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

広域創生に向けたインバウンド戦略を支える会津のデジタルDMO【第6回】

〜データに基づく市民中心のスマートシティの実像〜

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2018年4月19日

第5回では、「デジタルガバメント」の重要性と、その実現にはデータ分析に基づき個別にカスタマイズしたサービスやおススメ情報の必要性を解説した。これらのサービスは、アクセンチュアが提供する「デジタル・シチズン・プラットフォーム(DCP)」上で提供されている。今回は、このDCPを訪日観光客向けプロモーションに活用した、インバウンド戦略の核となる「デジタルDMO(Destination Management Organization ):DDMO」について解説する。

 2018年は明治維新150周年にあたり、各地で関連イベントが開催されている。会津地域にとっては、戊辰戦争から150年を迎えた「戊申150周年」の年であり、他地域とは異なる趣向のイベントが開催されている。

 会津若松市を中心とした会津地域は、豊かな自然環境や観光資源に恵まれ、温泉宿や食なども充実している。古くから東北の代表的な観光地として、多くの国内観光客が訪れていた。白虎隊や野口英世など、魅力ある歴史資源もあり、修学旅行のメッカでもあった。多い時には年間約400万人の観光客を迎えてきた。

 しかし、2011年の東日本大震災以降、放射能汚染などの風評被害により、観光客は激減。福島空港では一部国際線の運休が続いた。そこで、デジタル技術を用い、会津地域の正しい情報と観光地としての魅力を世界に発信していこうと、2016年2月に新たに開始されたのがデジタルDMO(Destination Management Organization)の取り組み「Visi+Aizu(ビジットアイヅ)」である(図1)。

図1:会津スマートシティプロジェクト全体におけるDDMOの位置づけ

 DMOとは、地域の観光事業を活性化させるために、ステークホルダーを巻き込みながら戦略を確実に実施する法人のことである。観光庁による定義は、以下のようになっている。

「地域の“稼ぐ力”を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する『観光地経営』の視点に立った観光地域づくりのかじ取り役として、多様な関係者と共同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人のこと」

 このDMOについて、会津ではデジタルを活用して実践しようとして、デジタルDMO、つまりDDMOとしての「Visi+Aizu」を立ち上げたのである。

観光の計画時点から現地での体験、帰路までをサポート

 観光客の多くは、事前にたくさんの情報を集めて目的地を選び、計画を立ててから目的地に向かう。目的地では、宿泊・食事・観光を楽しみ、さまざまな体験をして帰路につく。この旅行の一連のプロセスをデジタルでサポートするのが「Visi+Aizu」になる(図2)。

図2:インバウンド拡大に向けたデジタルDMO「Visi+Aizu」の事業概要