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  • 会津若松市はデジタル化をなぜ受け入れたのか

「市民中心」こそがスマートシティプロジェクトの本質【第18回】

会津地域スマートシティ推進協議会会長/スマートシティ会津代表の竹田 秀 氏との対談

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2019年4月18日

スマートシティは終わりなき道のり、会津若松を世界が注目する場所へ

中村 日本は超高齢社会を世界で最初に経験します。その日本を追うようにアジア諸国も高齢化社会に突入していきます。これは日本にとっての好機ととらえるべきだということを強く訴えています。

 日本の課題が凝縮した会津地域には実証フィールドがあります。直面している現実問題や社会課題をみんなで解決していくことで新しい産業が生まれ、次の成長や発展に寄与します。アジア諸国では数年後、そうした日本の経験を必ず参考にするでしょう。会津地域から、それらの情報を発信していきたいと思います。

竹田 日本が得た知見やソリューションをパッケージにして海外に輸出する。ノウハウを提供することでビジネスを展開する。そうしたアウトバウンドの仕組みが今後のテーマの1つになるでしょう。市民を中心に、行政・企業・大学のコラボレーションを実現し続けていきましょう。

中村 スマートシティは「完成」や「終わり」があるプロジェクトではありません。1つの実証ができたら、会津からほかの地域に展開(実装)し、会津では次の実証が始まる。そうして永続的に改善を続けていくものです。人が入れ替わったり代替わりがあったり、地域が変遷していく以上、スマートシティの取り組みにもゴールはありません。

 ハードウェア面での大規模開発は徐々に収束していくかもしれませんが、中・小規模のサービスは、その時期のニーズに応じて開発し提供していくものです。会津地域が常に先端サービスの「発祥の地」「実証を行う場」になれば、3カ月に1度くらいのペースで新しいサービスがアジャイル的に生み出されるでしょう。

 ベンチャー企業が生まれたり、会津大学の学生が起業や就職をしたりといったことが続いていくことが予想されます。データ活用の実証フィールドが整っている会津地域から新しいサービスが生まれ、そして全国へと広がっていけばよいのです。そうした取り組みを、私がセンター長である限りやり続けます。

 会津若松市の取り組みは日本国内で注目されてきました。今後は、まずはアジア各国から、そして世界中から注目され、私たちのノウハウが広まっていくと予測しています。その過程において日本のポジションも明確になると考えます。そうした取り組みを理事長や関係各所と連携しながら進めていきたいと思います。

竹田 アクセンチュアには2つの役割を期待しています。1つは行政や大学、企業を結びつけるコーディネーターとしての役割。もう1つは会津から世界へ向けた情報発信基地としての役割です。会津地域のステータスを高め、日本の課題解決への寄与に尽力してください。

中村 彰二朗(なかむら・しょうじろう)

アクセンチュア福島イノベーションセンター センター長。1986年よりUNIX上でのアプリケーション開発に従事し、国産ERPパッケージベンダー、EC業務パッケージベンダーの経営に関わる。その後、政府自治体システムのオープン化と、地方ITベンダーの高度人材育成や地方自治体アプリケーションシェアモデルを提唱し全国へ啓発。2011年1月アクセンチュア入社。「3.11」以降、福島県の復興と産業振興に向けて設立した福島イノベーションセンターのセンター長に就任した。

現在は、東日本の復興および地方創生を実現するため、首都圏一極集中のデザインから分散配置論を展開し、社会インフラのグリッド化、グローバルネットワークとデータセンターの分散配置の推進、再生可能エネルギーへのシフト、地域主導型スマートシティ事業開発等、地方創生プロジェクトに取り組んでいる。