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「市民中心」こそがスマートシティプロジェクトの本質【第18回】

会津地域スマートシティ推進協議会会長/スマートシティ会津代表の竹田 秀 氏との対談

中村 彰二朗(アクセンチュア 福島イノベーションセンター センター長)
2019年4月18日

会津若松市のスマートシティプロジェクトでは、目的や役割に応じて複数の組織が組成されている。「会津若松市まち・ひと・しごと創生包括協議会」が各社からのプロジェクト提案を受け、事業企画・協議の段階で「会津地域スマートシティ推進協議会」がプロジェクトを牽引する。事業運営・実施は、民間企業・団体で構成される「一般社団法人スマートシティ会津」が実施する。2018年、会津地域スマートシティ推進協議会とスマートシティ会津の幹事会が改選され、それぞれの「会長」「代表理事」に会津地域の中核病院である竹田綜合病院が就任した。同病院の理事長である竹田 秀 氏との対談を紹介する。(文中敬称略)

写真1:対談する竹田健康財団 竹田綜合病院 理事長で、会津地域スマートシティ推進協議会 幹事会会長とスマートシティ会津 代表理事を務める竹田 秀 氏と、アクセンチュア イノベーションセンター福島センター長の中村 彰二朗 氏

中村 彰二朗(以下、中村) アクセンチュア イノベーションセンター福島 センター長の中村 彰二朗です。会津地域の地方創生に取り組んできた「会津地域スマートシティ推進協議会(以下、推進協議会)」は、2012年の発足から7年が経ちました。この間、多くの参画者の手によって、数々の取り組みが形や成果になって現れました。

 その中で推進協議会の役割は、プロジェクトの事業企画と協議の担当ですが、それは自治体や大学だけが牽引するものでも、特定の企業が主導権を持つものでもありません。地域全体が参加し、産学官の各分野から代表者が集まって取り組んでいくからこそ協議会という形式を採っています。

市民参加のヘルスケアプロジェクトが最も重要に

竹田 秀(以下、竹田) 竹田健康財団 竹田綜合病院の竹田 秀です。このたび、協議会の2018年の代表選出で、推進協議会の幹事会・会長と、2018年3月に設立した一般社団法人スマートシティ会津(以下、スマートシティ会津)」の代表理事を謹んでお受けしました。

会津地域スマートシティ推進協議会 幹事会会長とスマートシティ会津 代表理事を務める竹田健康財団 竹田綜合病院の竹田 秀 理事長

中村 ご快諾いただき、誠にありがとうございます。スマートシティの取り組みにおける喫緊の課題の1つは医療費などの社会問題です。会津地域で創立91年の伝統を持ち、東北地方における病院界のキーパーソンでもある竹田綜合病院の竹田理事長には、推進協議会・会長とスマートシティ会津・理事長として是非、プロジェクトを推進していただきたいという思いは、協議会メンバー一同、共通の願いでした。

アクセンチュア イノベーションセンター福島の中村 彰二朗 センター長

竹田 たしかに日本の医療現場では、個人情報保護法などの兼ね合いもあり、データ利活用のハードルが非常に高いのが現状です。一方で推進協議会は地域の任意団体のため、これまで、データの取り扱いにあたっての責任範囲の線引きが十分とはいえませんでした。今後の活動のためには、法人格を備えた組織が運営するほうが社会的信用もあります。個人情報管理の面でも意義があると思います。

中村 はい、法人格を持つスマートシティ会津を立ち上げ、その代表理事を竹田さんに引き受けていただいた背景には、竹田綜合病院は院内に「個人情報保護委員会」を設置しているなど、個人情報やデータを厳格に管理されています。そうしたデータ管理やガバナンスを竹田さんから学びたいということがありました。

 ICTオフィス「スマートシティAiCT」が開業し、新規ビジネスを展開していくうえでも、法人格をもつ組織が取り組むほうが展開しやすいという利点もあります。そうした点が、推進協議会とスマートシティ会津の棲み分けであり、役割分担でしょう(図1)。もちろん、産学官の連携が基軸になることは両組織に共通しています。

図1:会津若松市のスマートシティプロジェクトの推進体制