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  • Industrial IoTが求めるシカケの裏側

Industrial IoTが扱う「ファストデータ」の特性【第1回】

坂元 淳一(アプトポッド代表取締役)
2017年11月30日

サンプリング間隔が不適切なデータは役に立たない

 ファストデータが持つ“威力”を簡単なサンプルで説明する。図2のグラフは、サンプリングレート1kHzの6軸センサー(ジャイロセンサー加速度センサー)のRAWデータ(原データ)をそのまま1秒間分を示したものだ。このグラフの左から右にかけて1000個のデータが存在することになるが、この1秒間に起きた事象を細かな波形としてとらえている。状態そのものを克明に再現できるファストデータは、高速な電子制御などの解析にはなくてはならないデータである。

図2:サンプリングレート1kHzの6軸センサーのデータの例

 これに対し図3のグラフは、いささか乱暴だが、図2のデータを単純に10Hzにリサンプリングしたものだ。データソースは同じでも、もはや波形の様を成していない。元のRAWデータと比べ、リサンプリングデータのデータ量は単純に100分の1にまで抑えられているものの、目的が現象解析だった場合は役に立たないデータだといえる。

図3:サンプリングレート1kHzの6軸センサーのデータを10Hzに理サンプリングした例

 ただ、近年は通信コストの低コスト化、通信速度の高速化、エッジコンピューターのハイパフォーマンス化、クラウド基盤(IaaS:Infrastructure as a Service)の低価格化により、ファストデータをクラウドに伝送することが、かつてほど大きな負担にならなくなってきてもいる。

 様々な自動化社会を目指す次世代に向けたIoTシナリオでは、短周期サンプリング、つまりファストデータを求める要件が急増している。弊社が対峙しているファストデータ関連プロジェクトで取り扱うデータサンプリング周期は、10Hz程度のものから1kHzなどのものが多い。制御/センサーネットワーク側(エッジ側)のRAWデータをそのまま伝送する要件も少なくない。